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ナンシー関のエッセイ【書評一覧】 > ナンシー関のボン研究所
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作品名: ナンシー関のボン研究所 作家名: ナンシー関 ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆★★★★ ス:☆☆☆☆☆☆★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ ナンシー関その他のエッセイ |
久しぶりにナンシー関の本を読んだけど、やはり一定のレベルで面白いのがこの人の特徴だね。
当ブログの数値でいうなればオール6。どの本を読んでもオール6。まさにそんな完璧なまでの安定感がある。
ずば抜けて大当たりがあるわけではないんだけど、大当たりがない変わりに外れが一切ない。
とにかく安心して楽しめる笑えるコラムの名手、それがナンシー関だ。
さて、本書「ボン研究所」のは、ナンシー関が運営していたホームページ<ボン研究所>をまとめたもの。
そもそもナンシー関の事務所の名前が<ボン研究所>だったのだそうだ。
本書には日記として掲載されていたコラム、いとうせいこう作成の50の質問(うわ、昔流行ってたね!)などが掲載されている。
コラムの内容は大方普段どおりのナンシー節で芸能を切る感じなのだけど、ファンから更新しないことをしかられたり、もうホームページ運営無理かもと泣き言をいったり、プレゼントの応募を募ったり当選者を発表したりと、ホームページならではの内容も多かった。
ちなみに日記(コラム?)の部分を読んでいてすごく気になったのだけど、どうもこのホームページ運営、いやもっといえば事務所の運営自体、ナンシー関がかなりの度合いで個人でやっているような気がした。
だって商品の発送について「それでは死ぬ気で商品発送(こういうことが何よりも苦手)頑張ります」とか言ってるんだもの。
いやいやそこは人の手を借りようよ。
ところでナンシー関がなくなったのがすでに10年前。
もはやホームページなんぞ生き残っていないだろうと思い今検索したら、なんと健在だった。
ボン研究所
少し前のサイトが軒並みnot foundやら価格ドットコムやらになってて悲しくなりがちな昨今、あくまでも安定感があるのがナンシー関なのだった。
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ナンシー関のエッセイ【書評一覧】 > 何はさておき
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ナンシー関没後に残されたコラムや過去のコラムを集めて書籍化したもの。
遺稿集となるのか。
第一章は恐らく亡くなる直前まで連載中だった記事のようで(ナンシー関はタクシーで移動中に亡くなるという文字通り急逝だった)、いつもの調子で2001年から2002年6月までのテレビ事情が語られている。
ちなみに2002年(ナンシー関没年)最後の記事は旭化成の「イヒ」について。
最後までアイロニーの人だった。
なお、この章のタイトルを辿ると「高田万由子が皇室側の人間のようにふるまう、その根拠は何だ」「いじれる大物タモリに『リスペクト』を捧げるのが流行っている」「中澤裕子が『モー娘。』後も『ねえさん』と呼ばれる理由」など。内容が気になる上、タイトルだけでもアイロニーがひしひしと伝わってくるのが素晴らしい。
2章から3章は明らかに、ナンシー関が急逝したため方々から大急ぎであまったコラムを寄せ集めてきたような感が伝わってくる。
2章は1991年から2000年にかけてのテレビ事情に関するコラム。3章は1989年から2001年に書かれた、世情についての文化的なコラムが中心となっている。
さて、普段何気に気になっていること、ぼんやりと「変だなー」と思っていることが、エッセイの中で同じように語られていると嬉しくなることはしばしばある。
この嬉しさは、その発言者の持つ発言力に比例する。バカと同じこと考えても何も嬉しくはないのだ。それで、ことナンシー関のような切れる人物と同じことについて同じようなことを感じていたとなれば、その嬉しさはひとしお。
そんなテーマが3章の「『カワイイ』の定着でひとつ増えた日本人の心のヒダ」にあった。
近年言われ始めた「カワイイ」は従来の「可愛い」とは別の言葉である、というのがその論旨だ。
最近若い子たちの間では<こびとづかん>が「カワイイ」のだそうだ。
気持悪くこそあれど、明らかに可愛くはないこのキャラクターであるが、まあたしかにどことなく愛すべき点があるのは共感できる。ある一定の年代の子達ならば、キュンときちゃうのもわからなくはない。
この曖昧な感情を表す言葉は明らかに「可愛い」とは別の「カワイイ」であって、両者はまったく別の言葉として認められるべきものなのだ。
ってなことを普段ぼんやりと思っていたんだけど、ナンシー関がズバリと言ってくれていて非常にすっきりした。
そんなわけで今後外国人に「カワイイ」を説明するときは、「カワイイとは単に『可愛い』という意味だけではなく、『奇妙だ』や『気持悪い』という意味も含みます」とか「もし私がカワイイといってさえいれば、私の父はこんなことにはならなかったのに」とか「こんにちは、エミリー」「いいえ、私はトムです」というように説明しましょう。
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