忍者ブログ

書評ブログの【笑える本を読もう!】

書評ブログの【笑える本を読もう!】

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

SHARE THIS!!!    

作品名: 純平、考え直せ
作家名: 奥田英朗
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆★★★★★
楽:☆☆☆☆☆★★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
奥田英朗その他の小説
【名言・みどころ】
《#438 純平、最後の願いだ。考え直せ。 by名無し》

【書評・あらすじ】

 タイトルが『純平、考え直せ』。さらに背表紙のあらすじを見ると、「幹部の命を獲ってこいと命じられた」ヤクザの下っ端の純平に、ネット上で「忠告や冷やかし、声援が飛び交」うとある。
 このタイトルセンス。そして浅田次郎思わせる「任侠ドラマ」で、さらにそこに2ch的要素まで含まれるというのだ。なんとも笑える本的名作の匂いが濃厚な一冊じゃないか。
 そんなわけで、普段はあまりそんなことをすることはないんだけど、思わず定価でジャケ買いしてしまった。

 しかしそんな事前の「笑える本的」期待値の高い小説でありながら、読んでみると内容は思いのほかシリアスな作品だった。
 主人公の坂本純平は、幼いころに母親に捨てられてからというもの天涯孤独に生きてきた。
 喧嘩のおりに、ヤクザの北島と出会ってからは、彼を慕い、早田組の下っ端ヤクザになった。
 そんなあるとき、純平は組長から直々に敵のヤクザの命(タマ)を獲るよう指示を受ける。
 しかしこれは身寄りのない下っ端ヤクザである純平にとってはただただ栄誉あることで、びびったりひるんだりするよりは、自分にめぐってきたチャンスに燃えた。
 そして純平は決行のそのときまで、しばらく離れることになる娑婆を満喫するための、3日間の「自由」を与えられるのだった。

 しかしその3日は純平にとっては逆の意味で受難の3日間だった。
 というのも、その3日のうちに、兄弟の契りを交わすヤクザの信也、一晩寝たヤリマンOLの加奈、ゲイの青年ゴロー、西尾のじいさんなど、純平は多くの人と出会い、つながることとなったからだ。
 幼いころに母に捨てられて以来天涯孤独だった純平にとって、この3日で次々と出合った人たちと関わる温かさは、娑婆に残す後悔になりうるものだった。
 そして鉄砲玉として人を殺し、自分の青春のときを刑務所の中で過ごすこととなる空しさに気づき、心が揺れるのだった。

 知り合いのオカマを助けるためのヤクザとの諍い、西尾のじいさんの奪還、焼肉、焼肉に次ぐ焼肉。加奈が立てた純平に関するスレッドをきっかけに、白熱するネット上の議論。
 そして訪れる運命のとき。
構想なんてまったくありませんでした。僕は、「ストーリー」を描きたいわけじゃないんです。かといって「テーマ」を描きたいわけでもない。小説にとって、物語やテーマはあくまで「従」。人間が「主」。あえていうなら、人間のおかしさといったものを描きたかった。
著者インタビュー」より
これは光文社のホームページに掲載された奥田英朗のインタビューだが、この作品はまさに「構想なんてまったく」という奥田の手法がよくわかる一冊だったといえる。筋があって物語がどこかに向かっていくというよりは、主人公が進んでいくままに物語りも進んでいくような物語だった。

 キャラクターはどれも魅力的だったが、笑える本的には特に西尾のじいさんがよかった。
 元大学教授の無銭飲食常習者で、「いい子」であることに嫌気が差し、グレてしまった爺さんだ。この西尾のじいさんが、監禁された先のヤクザたちに「ヤクザ論」の講義をぶつシーンは名場面。
PR
SHARE THIS!!!    

作品名: ガール
作家名: 奥田英朗
ジャンル: 短編集

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
奥田英朗その他の小説
【書評・あらすじ】
 5話の働く女を主人公にした短編が収録されたユーモア短編集。
 奥田英朗の書く作品には路線がいろいろとあるけど、この短編集はずばり言って『マドンナ』と同系統だ。
『マドンナ』は中年サラリーマンを主人公にした短編集だったけど、この『ガール』はその女版、といった感じ。年齢的に「妙齢」も過ぎちゃったくらいの女たちが、時に男と戦い、時に年齢と戦いながら社会の中に生きている。そんなどこにでもありそうな人たちを主人公にした短編集。今書いていて気づいたけど、もしかすると『マドンナ』とは実際に姉妹本なのかな。
 以下2話だけあらすじ。

ガール
 表題作。
 由紀子は往年のディスコで鳴らしたイケイケギャルだった。
 そんな由紀子も今では32。このごろでは、若いころには勝手に転がり込んできた「おいしいこと」がめっきりなくなってきた。そしてそろそろ「ギャルとしての潮時」を感じていた。
 しかしそんな由紀子の城壁となっているのは、6年先輩の光山晴美、通称「お光」だった。
 38にして現役のギャル。
 このお光の揺るがぬギャルっぷりのため、由紀子はまだ自分も大丈夫かなあ…と思っているのだった。
 しかし、お光と行動をともにしているうちに、由紀子ははたと周囲のお光を見る目に気づいてしまう。
 やはり自分はギャルのままでいてはいけない!
 そんな若さと成熟との間で揺れる32歳の働く女の物語。

ひと回り
 34歳、入社12年のOL容子は、新入社員の指導社員に選ばれてしまった。
 容子が勤める老舗文具会社では、入社10年以上の社員が新人の教育を担当することになっているのだ。
 そしてとうとう容子に白羽の矢がたち、同じ営業三課に配属してくる新入社員の教育係を命じられてしまったのだった。
 さて、かくして容子が担当することになった新入社員、慎太郎だが、困ったことに大変なイケメンだった。
 容子でさえドギマギしてしまうほどのイケメンで、当然周りの若い子たちがほうっておくわけはなく、若手のOLたちがあの手この手で慎太郎に誘惑をしかけてくる。
 容子もまたほとんど一目ぼれをしてしまっているのだけど、34でしかも教育係の自分が露骨に好意を示すわけにはいかず、しかしほかの女に取られてしまうのは許せない。
 かくして容子は、指導社員の特権を乱用し、あの手この手の女たちから慎太郎を引き離そうとあの手この手を使う。
 ある!こういうこと、ある!
 そう思わずにいられない、若い男に勝手に翻弄される34歳OLのご乱心。
 読みながら、ひゃー!と我がことのように恥ずかしくなること請け合い。
 
 とはいえ考えてみれば、筆者、男。
 読者、男。
 純度100パーセントの男率なのに、若いイケメンにドギマギするOLの姿を自分に投影して恥ずかしがってんだから、なんなんだろ、これ。

SHARE THIS!!!    
 TOP | 1 2 3 4 5 6  ≫ NEXT
Sponsored Link
Share
Ranking
人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ
New Reviews
Recommend
松尾スズキ (小説)
 クワイエットルームにようこそ
中島らも (エッセイ)
 中島らものたまらん人々
町田康 (エッセイ)
 猫にかまけて
奥田英朗 (小説)
 ララピポ
森見登美彦 (小説)
 夜は短し歩けよ乙女
Sponsored Link