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書評ブログの【笑える本を読もう!】

書評ブログの【笑える本を読もう!】


作品名: タイ怪人紀行
作家名: ゲッツ板谷
ジャンル: エッセイ

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆★★★★★
ス:☆☆☆☆★★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
ゲッツ板谷その他のエッセイ 
【書評・あらすじ】
 ゲッツ板谷旅行記シリーズの一つ。
 仕事もせず、着替えも散髪もしない。何もしなさ加減が人間として「そろそろヤバいな」レベルに達したころ、「ドミノ倒しのように変な奴らと会う」ことで自らの活力を復活させんと、ふとタイ行きを思いつく。
 おりしも戦場カメラマンでカメラマンコーディネーターをしてくれるカモちゃんに連絡を取ったところ、カモちゃんは「自分のアゴヒゲ一本一本に名前を付けるくらいヒマ」だった。
 かくして、これに担当編集者のハセピョンを加えた3人による、タイ強行一周旅行が始まる。

 この企画の狙いとしてはまさに「ドミノ倒しのように変な奴らと会」ってそいつらをとことん笑い飛ばそうというところにあったんだろうと思う。まったくタイ人って馬鹿だぜ、がっはっは!みたいな。
 ただ、その狙いはいささか失敗しているように感じた。
 似たようなエッセイにさくら剛の『インドなんか二度と行くか!ボケ!』があるけど、この『タイ怪人紀行』もおそらく『インド~』と同じようなエッセイにしたかったんだろうなといった感じではあった。外国人のめちゃくちゃな振る舞いをツッコミまくる、みたいなスタイルで。
 で、何が失敗だったかって、いかんせんインド人に比べてタイ人ってパワー不足なのだ。
 あれ、いま僕さらっと国際的に危険なことをいっている気がするけど。ま、いいや。
 そういえばさくらももこも『さるのこしかけ』の中で、インド人にむかつきすぎて「もうインドに用はない」とまでいっていた。
 なんかどうも、よくも悪くも人にそう思わせるほどのパワーがインド人にはあるらしいのだ。
 しかしこの『タイ怪人紀行』に出てくるタイ人にはっきりいってそんなパワーはない。タイトルに象徴されるような「怪人」はぜんぜんでてこない。オカマはいるけど怪人はいない。実際文中で本人も困ってた。
 たしかにエッセイの中でタイ人のテキトーさは強調されているし、タイ人のヌケっぷりも強調されている。そうやってタイ人のキャラクターづくりはされているのだ。
 ただ、イマイチ面白くはない。なにか歯切れの悪さを感じる。
 やはり旅行記の場合、「こいつらぬっ殺す!」くらいの怒りによって書かれた文章が笑えるのだと思う。
 怒りによって異文化を心置きなく笑う。そこに遠慮のない笑いが生まれるのだと思う。
 しかしいかんせん、ゲッツ、普通にタイ人好きそうなんだもん。文章に全然悪意がない。だからなんだか道中におきたことを詳細かつ時系列に述べ、それをむりやりギャグにしようとしている感じが伝わってくるのだ。
 そんなわけで今回は評価は弱冠低めに。まあなんだかんだで面白くは読みましたけど。

 ところで、旅のお供のカモちゃん。読んでてびっくりしたんだけど、どうやらゲッツの本に挿絵(マンガ)を寄せている西原理恵子の旦那らしい。
 その時点でけっこう驚いたのだけど、しかも、ってぇことはよ、カモちゃんって「毎日かあさん」にでてくる父ちゃんのモデルというか、本人ってことなんじゃ?そういえば「毎日かあさん」の父ちゃんもカモちゃんと同じく戦場カメラマンだったっけ。
 うわぁ本人なんだ。

類似作品 『インドなんか二度と行くか!ボケ!』 さくら剛

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作品名: 直感サバンナ
作家名: ゲッツ板谷
ジャンル: エッセイ

笑:☆☆☆☆☆☆☆★★★
楽:☆☆☆☆☆★★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ゲッツ板谷その他のエッセイ 
【書評・あらすじ】
 ゲッツ板谷の本の解説が松尾スズキ。
 バナナの皮をむいたらバナナの中身が出てきた、みたいな。まずそうな定食屋でボンカレーが出てきた、みたいな。中国人じゃないかと疑っていた彼氏の家に遊びに行ったらコタツで毛沢東がお茶漬け食べてた、みたいな。そんな「やっぱり」感だ。
 松尾スズキ自身が解説でこういっている。「出会いたいとか出会いたくないに拘らず、出会わないのが不思議なくらい私たちは、乱暴な言い方だが『近い!』」。
 暴走族やヤクザ予備軍として10代を過ごしたゲッツ板谷、一方で文科系街道を突っ走ってきた松尾スズキ。その二人の生い立ちは見た目の違いに露骨に表れているのだけど、にも関わらず、たしかに二人の笑いに対するスタンスは近い。

 このエッセイは「パチンコ必勝ガイド」にて、テーマ・長さともに自由という「野放し状態」で連載されていたものを集めたものだそうだ。おかげで本に一貫性はない。
 が、基本的にゲッツ板谷の身辺を固める変人たち、『板谷バカ三代』でもお馴染みのケンちゃんとセージら身内の変人、浪人時代からの友人西原理恵子、毎年女装姿の自分の写真をプリントした年賀状を送ってくる編集長など、そこはかとなく変人についての話題が中心だった。
 特に、車内で四方を変人によって固められてしまって以来電車嫌いになった話は、なかなか壮絶でよかった。「んい~~~っ。次はドンドリュー岬~~ッ、次はドンドリュー岬~~ッ。よしっ、むすっ、なんっ」延々独り言を言っている隣の男、傘の柄を自分にかけてきた上に「この男は!許さないからね!」と憤怒した逆隣のババア、そして正面ではOLが…。
 不条理でよろしい。そういうところに、整骨院でうつ病告白するおばさんとうっかり遭遇してしまう松尾スズキのおかしさと同じ香りがする。
 力技の笑えるエッセイ。困ったときはゲッツ板谷ね。

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