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ゲッツ板谷のエッセイ【書評一覧】 > 戦力外ポーク
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30越してもヤンキー武勇伝。わけえのがいきがって、かつてやくざ予備軍と恐れられたこの俺様にからんできやがったから、イカレた暴走機関車の弟といっしょにちょっとやっちゃいましたよ。
そんな趣のエピソードが散見される一冊。
主人公がめちゃ強い元不良、という点では『GTO』とかを見たあとのようなカタルシスが得られるような気がしなくはないけど、それにしても年甲斐もない。
ゲッツ板谷には変人、キチ○イが集まってくるらしい。もっともキチ○イ濃度が濃厚なのは彼の身内なんだったりするんだけど。
ただそんなキチ○イと思しき人が吐く名言というのはときおりとてもすばらしいもので、たとえば本書では以下のようなやりとりが残されている。
親戚のケーコというおばさん。思ったことを何でもそのまま激しく口にするため、ゲッツからは「直舌」と呼ばれている。そんな直舌ケーコとゲッツとのやりとり。
「コーちゃんて、豚キムチみたいだけど優しいね……。このままホテル行こ、何でも好きなことしてあげるから」
「いや、いいからっ。そんなことより何かあったろ?言ってみ、聞いてやるから……」
そんなゲッツの優しさに対して件のケーコが名言を吐くのだ。
「で、そのあとでフェラチオを要求してくるわけか、ひと昔前のソビエトのように」
すごい、の一言。
松尾スズキを彷彿とさせる言語感覚だ。もちろんキチ○イ的な意味で。
そのほか、妹が子どもを産んだ病院の食堂で出されているカレーピラフが異常にうまく、妹が退院した後も未だにそこにピラフを食いにいっているんだけど、どうも最近そこの店員からひそかに自分が「ピラフ水牛」と呼ばれていることに気づいてしまった話(「死に床グルメ」)がわりと好きだった。
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ゲッツ板谷のエッセイ【書評一覧】 > ベトナム怪人紀行
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作品名: ベトナム怪人紀行 作家名: ゲッツ板谷 ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆★★★★★ ス:☆☆☆☆★★★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ ゲッツ板谷その他のエッセイ |
笑える本的安パイ的エッセイスト、ゲッツ板谷。
元(現?)ヤンキー。自らの側近に集う変人たちを描くエッセイのほか、世界中を旅し、そこで出会った奇人変人との戦いを綴るエッセイを得意とする。力技の笑えるエッセイの名手。
そのスタイルはさくら剛とそっくりで、もはや見分けがつかないレベルなのだ。
実際、本書『ベトナム怪人紀行』を読みながら、「そういえば旅の途中で終わっちゃって次の巻に続くって感じのエッセイがあったなー。あれ読まなきゃなー」と思っていたら、よく考えたらそれ、さくら剛の『アフリカなんか二度といくか!ボケ』のことだった。
似てるのは知ってたけど、完全に同一人物として区分けしていた自分にびっくり。
さて、本書の紹介。
これまで2度ベトナムに来たというゲッツ。その2度の滞在は彼にとって「完敗」だったという。
そしてこのエッセイに収められた3度目のベトナム滞在は、「どんなことをしてでも勝ちに行く」ための旅だった。
しかしのっけから士気をあげるためにラップを聞くべく持参したMDウォークマンにディスクを入れ忘れ、強制的に妹のユーミンを聞かざるをえない状況に。
その後オカマの少年に気に入られたり、現地であった日本人観光客の姉ちゃんには気持ち悪がられたり、前回出会った親愛なるサイさんが再会してみるとただの詐欺師だったり、手乗り鹿や犬やくそまずい魚の輪切りばかり食わされたり。
とにかく敗戦敗戦、また敗戦といった感じの旅になっていた。
これまでゲッツの描いたインドやタイの紀行を読んだけど(後日追記:インドのやつは読んでませんでした。さくら剛の『インドなんか~』と混同してたみたいです。だって2人そっくりなんだもん)、今回のこのベトナムは他と比べてやけにシリアスだった。
話の中にベトナム戦争を盛り込まれているのが大きな要因かと思う。本文ではベトナム戦争を暴走族のシマ争いに置き換えてなんとかギャグにしようと努めている様子があったけど、そんなもん同民族間の無意味な戦争という重厚なテーマの下では焼け石に水である。本書ではベトナム戦争の闇の部分が色濃く反映されている。
また、ベトナム人の国民性も大きく関わっているように思われた。本文で板谷も言っているけど、「ベトナムは基本的にマジメな人が多いため、逆にその不器用なマジメさから生じる数々の面白いことが各所にあふれている」ということなのだ。つまりインド人やタイ人に比べてキャッチーに面白いって感じではないわけ。
登場人物は主人公ゲッツ板谷、戦場カメラマン兼現地ガイド兼友人サイバラ(「毎日かあさん」の作者)の旦那のかもちゃん(鴨志田穣)、ベトナムに暮らすコーディネーター役の鈴木君。
以上の3人が強烈な個性を発しながら行う珍道中。
まあ、笑える本的安パイって感じで楽しめる一冊だったかな。
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