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栗田有起の小説【書評一覧】 > お縫い子テルミー
芥川賞候補作となった表題作の中編小説「お縫い子テルミー」と、同じく中編小説「ABARE DAICO」が収録された一冊。
笑える本的には「ABARE DAICO」がクスリと笑える感じだった。
父親は「いない」ことになっている(が、よく電話で話をする)母子家庭で育った主人公の小学生、コマ。
親友の美少年でしかも秀才、オッチンに憧れており、いつかオッチンのように「小松、すげえ」と呼ばれるのを夢見ている。
そしてその夢をかなえるためにさしあたって、コマはあらゆる知り合いの名前(スーパーの店員含む)を覚えようと努めている。
そんなある夏、コマは体操服を無くしてしまう。買いなおすには6000円もかかってしまう。
そしてコマは、自分の家が母子家庭で貧しいことを知っている。
そこでコマは思いつく。
母親に迷惑をかけないために、留守番のアルバイトをして自分で体操服を買おうと。
しかしそうして留守番をまかされた家の主人はどう見ても危ない人で、部屋も壁一面がビデオテープで埋め尽くされるなど、様子がおかしいことになっている。
しかもコマは小学生ながら、下着泥棒の容疑をかけられ警察にマークされてしまう。
とまあ、あらすじはざっといってこんな感じ。
基本的なテンションは相変わらず栗田有起らしく、あまり劇的にならずにしれっとしている。
実はコマが泥棒の容疑をかけられたときに母子家庭の問題が深刻に物語りに絡み付いてきたりもするのだけど、それもあまり深刻になりすぎず、さらりと物語に溶けてゆく。
ギャグも深刻なできごとも「そういうもの」として流れてゆくのが、この栗田有起という人の書く小説の面白さなのかな。
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