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宮藤官九郎のその他の本【書評一覧】 > 「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部
作品名: 「あまちゃん」完全シナリオ集 第1部 作家名: 宮藤官九郎 ジャンル: ドラマ脚本 笑:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ ス:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ 危:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 宮藤官九郎のドラマ脚本とか |
ウニは銭、海女はサービス業、わがったな
【書評・あらすじ】
2013年、NHK朝の連続ドラマ小説で社会現象を起こした伝説の連ドラ「あまちゃん」。「あまロス」「じぇじぇじぇ」といった、きっと10年後には何のことかわからないであろう言葉が生まれ、流行した。2014年、年が明けたばかりの1月上旬にこんな説明をつけておくのも馬鹿らしいんだけど、それが馬鹿らしくなるほどに誰もが知っているくらい、とにかく2013年は「あまちゃん」の1年だったといえる。
かくいう僕もそのブームに乗った一人で、毎朝、見逃したときには昼、それも見逃したときは夜のBS、ととにかく毎日見た。見れるときは一日3回とも見た。昼はケータイで見た。NHK連ドラを楽しみにしてこれほど完璧に見たのは初めてのことだった。そしてもっと言えばなんなら1年前の5月からこのドラマが始まるのを楽しみにしていたほどだった。
それほど楽しみにしていたこの「あまちゃん」。
というのも脚本は笑える本的にもおなじみのあの宮藤官九郎だったからで、実際のところ、「劇的!ビフォーアフター」のパロディや、トシちゃんのそっくりさん、フレディのモノマネなど、クドカンの小ネタでいっぱいの脚本はNHKがよく許可したなと思うほど斬新でよかった。また、主演の能年玲奈のアホキャラと透明感がその脚本に見事にはまっていた。
そんなクドカンが書いた「あまちゃん」の脚本がこの「あまちゃん」完全シナリオ集だ。
この本の冒頭に掲載されたチーフ演出の井上順の記事によると、「放送されていない台詞やシーンも、このシナリオ集には含まれている」という。クドカンの書いた脚本が13分程度しかない1話の枠に収まりきれないで、「泣く泣く切ってしまっ」た箇所が多くあるというのだ。つまりこのシナリオ集のタイトルの「完全」とは、つまりドラマ化されてカットされる前の、宮藤官九郎が書いた完全な脚本ということなのだ。
ということは、ドラマとこのシナリオ集を照らし合わせてじっくり見ていけば、ドラマ化の際カットされた箇所が明らかになるということになるんだけど、正直読んだだけではどこがカットされた箇所なのか、いまいちわからなかった。
恐らくストーリーに関する箇所は切れないだろうから、数多とある小ネタがこまごまとカットされているということなのだろう。
今ちゃちゃっと確認してみたところ、たとえば第1回「おら、この海が好きだ!」では、夏さんの数箇所のナレーションがカットされており、そのくだりで大吉から春子に送られた74通のメール(『今、救急車を呼んだYO!(’j’)/』『やばい!(’jj’)/』『今来れば間に合うかも!』『手遅れかも知れない!(’jjj’)/』等)の紹介があったようなのだが、そんな小ネタがカットされているようだ。その他、68回で漁協の長内のお茶に唐辛子を盛った勉さんが69回ですっかりそのことを忘れ「ひいひい」言っている長内に引いているくだりなど、なかなか惜しい小ネタがカットされてしまっている。
これはチーフ演出の「泣く泣く」の理由がわかる。
さて、ドラマ脚本はやはりドラマで見るのが一番楽しいというのはいうまでもないことだけど、脚本として「あまちゃん」を読み直せるうれしい点は、随所にちりばめられた(そして時としてカットされた)小ネタを楽しめる点だろう。
そこでここではいくつか印象に残った小ネタを引用しておこう。
栗原 「違うっていうか、やだ! 誰も居ないから、開放的な気分になっちゃって、TM NETWORKのGet Wildに合わせて踊ってました! 合わせてっていっても、頭の中で鳴っている音に合わせて…だから…死にたい!」ちなみに僕がドラマで一番好きだったシーンは、潜水土木課の実習をプールの外から眺めていて「顔見えなくても潜り方分がんだ」なんてことをいいながら種市の実習を見ているんだけど、実は種市じゃなくてイッソンだったという場面だったんだけど、これは正直脚本ではいまいち楽しめなかった。もっとも、皆川猿時の怪演ありきだから当たり前なんだけどね。
(第46回、観光協会で一人で踊っているところをヒロシに見られて)
ユイ 「幼稚園の頃とかさぁ、大きくなったら何になりたい?って聞かれて、保母さんとか花屋さんとか答える子いたじゃない?ウソつけって思ってた。そう答えれば親が安心してニッコリ笑うの、本能的に知ってるんだよ。だから私は違うこと言ってやろうと思って」
アキ 「何になりたかったの?」
ユイ 「キャメロン・ディアス」
(第60回、ユイがアイドルになりたい理由を尋ねられて)
アキ 「ばっば、おら映画女優になりでえ!」
夏 「…なに?」
アキ 「この人みでえになりでえ!」
とテレビを指差すアキ。
声 「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」
夏 「(見て)水野晴郎が」
(第63回、アキ、映画「潮騒のメモリー」で演じる鈴鹿ひろみを見て)
さて、そんな「あまちゃん」の全シナリオ集。
第1部には全ストーリーの前編、つまりアキが北三陸に来てからアイドルになりに東京へ行くまでが収録されている。全629ページ。さすが長期の朝ドラだけはある。これで半分だ。
巻末には挿入曲の「潮騒のメモリー」の歌詞と、春子さん役の小泉今日子のあとがきが掲載されている。
後編は第2部に。すでに買ってあるので、読み次第記事更新予定。しかししばらく先になるだろう。
今後も「あまちゃん」ファンであり続けるあなた、今だ「あまロス」を抜け出せないあなたに。
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