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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: 青天の霹靂
作家名: 劇団ひとり
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆★★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
劇団ひとりの他の小説 
【書評・あらすじ】
 いやー、読売新聞に寸評が載っちゃいました。11年6月26日(日)の朝刊にわがブログ名が載っちゃってます。デーブスペクターの新刊の広告みたいなやつだったんだけど、自慢です。読売購読者の方はぜひくまなく探してみてください。

 さて、劇団ひとりの小説第二段、「青天の霹靂」。
陰日向に咲く」がとてもよかったので、文庫化を待つことなくブックオフで見つけた際に迷わず購入。
 主人公は轟晴夫。35歳、金なし夢なし恋人なし。ちっぽけなプライドばかりが高い典型的なだめなやつだ。
 場末のマジックバーで売れないマジシャンをしている。
 同じバーでかつて一緒に働いていた後輩は今ではテレビで人気者になっていて、そんな後輩の姿を小ばかにしながらも、心のどこかでずっとうらやましくおもっていた。
 そんなあるとき、警察から電話がかかってくる。
 その用件は、17で家を飛び出してから会っていない父親の訃報の知らせだった。
 父子家庭で育った晴夫にとって唯一の家族だったが、飛び出して以来どうしているかも知らなかった。
 警察によるとどうやら父はホームレスをしていたらしい。
 晴夫は警察から聞き、父が亡くなった場所に行った。
 そしてそこで父の本当の思いに気づき、親を捨てたばかりでなく、ろくな人間にさえなれなかった自分の親不孝を激しく後悔する。
 そんな折、青天の霹靂が晴夫を打った…

 やはり劇団ひとりはダメなやつを描かせると抜群にうまい。
 自分は世界の主役で、まさか自分は「普通」になんかならないだろうと信じて生きてきて、今はなんでもないやつかもしれないけれど、いつか一冊の本かなんかと衝撃的な出会いをしてスペシャルな人間になるものだと信じていた。
 それがいつの間にか年をとっていて、そんな特別な出会いがあるわけでもなく、「普通」になんかなるもんかと思っていたスペシャルなはずの自分が、「特別」どころか「普通」にさえ遠く及ばないことに気がついている。
 そんなやつのくせに、というかそんなやつだからこそ、ちっぽけなプライドが高い。
 後輩と好きな女に肉体関係があるのかが気になってしかたないのだけど、どこまで関係が進んでいるのかを尋ねるのにいちいち「鼻毛の処理」をすることで自分なりの「余裕」を演出しなければならない。
 そんなダメさゆえに過剰なまでの自意識を抱えた主人公のキャラクター描写が、抜群に可笑しいのだ。

 しかし惜しむらくは、物語が進んでいくにつて、そんなダメなやつの魅力がどんどん描かれなくなってゆくところだ。
 物語は途中からテーマが<家族愛>みたいな方向に固まってゆく。
 それはいいのだけど、その方向に進むにつれて、主人公のダメ人間な魅力が「後悔」の一言で片付けられてしまっているように見える。
 それはまるで、映画「ドラえもん」でのび太が急に勇敢になってしまうのを見たときの感じに似ている。
 もっとダメなやつのダメっぷりで笑わせてほしかったなと思う。
 あくまでも小説を読んで笑いたい男の感想だけど。

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作品名: 陰日向に咲く
作家名: 劇団ひとり
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆☆☆★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
ス:☆☆☆☆☆☆☆☆★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
劇団ひとりの他の小説 
【書評・あらすじ】
 ホームレスへの憧れが過ぎて週末をホームレスとして過ごす会社員、売れないC級アイドルをもやは母の愛のレベルで応援する青年、合コンで知り合った男に遊ばれたあげくその友だちにまで「片手間」でしてあげる女子大生、ギャンブルで借金にまみれた挙句オレオレ詐欺を試みる男…。
 ダメなやつらの人生のワンシーンを描いたユーモア短編集。
 ダメなキャラクターたちの個性がよく描けていて、おかしくて感動的な一冊。

 本当に面白かった。これが処女作かと驚くほどに。かなりじっとりした感じがあったけど、そこもまた味としてよし。芸人本が売れまくってる昨今だけど、これはその系列に並べるのは失礼な気がする。正統派フィクションとして十分に読めるのだ。
 作風としては奥田英朗の『ララピポ』を彷彿とさせるものがあった。作風自体もそうなのだが、評価も僕の中ではそれくらい高い。
 文庫化もされたし、まだ読んでないならそろそろころあいでは。

 なお劇団ひとり実父の川島壮八が書いた文庫版の「解説」も興味深かった。
 幼少期にアトピーや喘息に苦しんだ話、仕事の折でアラスカに家族で暮らした話、日本に帰国後勉強についてゆけず落ちこぼれた話、工業高校にはいるもすぐに退学し、結局定時制高校を卒業した話など、テレビでは語られない(?)父親から見た劇団ひとりの半生が綴られている。
 本書を生み出すにいたった劇団ひとりのキャラクターを見る眼は、定時制高校の暇な日中やアルバイトによって培われたのではないか、とのことだ。

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