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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: 中島らものたまらん人々
作家名: 中島らも
ジャンル: エッセイ

笑:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
中島らものその他のエッセイ
【書評・あらすじ】
 灯台元暗し、といった思いだ。なんだか逆に悔しい気さえする。このエッセイ、中島らもの中でもダントツで笑えるじゃないか。
 特に読むべき本がみつからず、大昔に読んだはずのこの本を何の気なしに引っぱりだして再読したのだが、これがもうめちゃくちゃに面白かった。

 各章「わからん人々」「たまらん人々」と題されており、中島らもが営業マン兼コピーライター時代に出会ったたまらん人、妙な人、変な人、中島らも、気色悪い人、むかつく人、中島らもなどがネタにされている。
 そもそもこの連載は某クリエイター向け雑誌に掲載されていたそうなのだが、その悪意ある連載はクリエイター業界に恐慌をもたらし、当時は関係者より「中島はクラウス・ノミ直伝のエイズ保菌者らしい」「西中島南方のマンションに女を囲っている」などの中傷が乱れ飛んだのだという。
 あげく、掲載されていた雑誌が廃刊に追い込まれ、連載はわずか3回で終了することになってしまったのだという。
 ひどい。ひどすぎる。
 ちなみにその遺志を『ぷがじゃ』という雑誌が受け継ぎ掲載誌を変えて連載が続くことになるのだが、その『ぷがじゃ』担当のコボリ氏、何十年もあとにらもさんの遺稿集を編集することになる人だったりする。マニア情報ではあるが、コボリさんとらもさんの縁の長さがいいじゃない。

 ところでこの本の中の台詞に、「どっちにしてもボチボチ働かなあかんなワシ…」なんてものがあるが、どうも連載していた時期は「ヘルハウス時代」(中島らも無職時代。宝塚にある中島家にジャンキーが集まってみんなでいいことしていたという。ヘルハウス時代の日々については『バンド・オブ・ザ・ナイト』にて小説化)と重なるようだ。
 つまりあの怪物小説『バンド・オブ・ザ・ナイト』で語られる日々が、このエッセイの裏でリアルタイムに営まれていることになるのだ。
 このあたり、ファンとしてはおさえがたい興奮があるのだ。どうだ。分からんだろう。

 中島らもといえばとろーんとしたウェットな文章の印象が強いが、このエッセイでは文章がとても若々しい。はつらつとした元気のよささえ感じられる。話しを強引に笑いにもっていく手荒さは、この本以降の中島らもには見られないものだ。
 ここまで単純にからっとしている笑いは、中島らもには珍しい。もっとひねくれた笑いを提供する人だと思っていた。
変!!』と合わせて初期中島らもの傑作爆笑エッセイと評しておく。

 巻末には「こたえん人々」として新作落語、実験的な短編小説、短編が1篇ずつ収録。
 いずれも単純に笑える作品ばかり。
 特に最後の短編「菅原センセの”ここ一番”」は『超老伝』の雛形のような作品で、語り手の構造がそっくりだった(また、あとで確認したら名前まで同じ、菅原法斉!)。
 きっとこれを元に『超老伝』は書かれた…、なんて推論がはたらいて、ファンとしても楽しい作品。どうだ。わからんだろう。
 それにしても、これらに関しては以前に読んだ記憶がまったくない。
 もしかすると、最初に読んだ当時はエッセイ以外の読み物に関心がなかったから、本当に読み飛ばしていたのかもしれない。
 なんにしても再読してよかった。

 さて、再読した感じがあまりにもよかったので、評価に関しては当ブログ初の「笑える度10」をつけることにした。
 もちろんこの評価の高さは僕の本心からのものだし、実際にそれくらいこの本は笑えるのだ。
 しかし、中島らもだからというひいき目がいっさいないかというと、それはそれでうそかもしれないのでご注意いただきたい。
 だって好きなんだもの。

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作品名: へらへらぼっちゃん
作家名: 町田康
ジャンル: エッセイ

笑:☆☆☆☆☆☆☆★★★
楽:☆☆☆☆☆★★★★★
ス:☆☆☆☆☆★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆☆★★
町田康この他のエッセイ
【書評・あらすじ】
 町田康の処女エッセイ集。
 自分の音楽、3年間ひねもす時代劇を観てすごした日々および時代劇について、小説について、など、徒然に綴られたエッセイ。
 自分の作る音楽と小説とロックについて語った「自分の触覚で歌い書く」あたりが好きだった。
 自分としては「電車が参ります」という駅のホームで流れるアナウンスの「参ります」が日本語として許容できないのだけど、その苦悶は他人にとってはまったくの些事であるらしく、まただからといってパンクロッカーとしてその憤りから「電車が参るとは何事だ」といった作品が生み出されるわけでもないので、やり場のない憤りをもてあましている。
 といった独特の苦悩。
 特に、もっぱら流行する音楽をして「およそ諸君はかく生きる可からざるを得ず、といった漠然とした概念的な歌」という評は胸のすく思いがした。

 また、大槻ケンヂによる「解説」も必見。必笑。
 よくも悪くも「町田康らしさ」がよくわかるエピソードが語られていて笑える。

 これは町田康の全著作に共通していえることだが、「町田節」ともいうべき町田の独特の語り口は、なんだかクセになってしまう可笑しさがある。
 町田康は分からない、と言いながら、それでもなんだかんだ読んでしまうのはそのためだと思う。

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