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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: バンド・オブ・ザ・ナイト
作家名: 中島らも
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆★★★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
中島らものその他の小説 
【書評・あらすじ】
 僕は音楽をしているということもあって、音楽スタイル以外のロックを理解することができなかった。ロックとは自己と世界の間の軋轢をアンプとディストーションでめいいっぱい歪ませたところに初めて生ずるものだと思っていた。
 しかしこの『バンド・オブ・ザ・ナイト』を読んで、僕は初めて文学がロックでありえることを理解した。

 注意のため言っておくと、「バンド」なんてタイトルがついているが、物語にバンドの話なんて出てこない。そういう話ではないのだ。
 描かれるのは中島らも自身が経験した「ヘルハウス時代」の、恐らくは半伝記的なできごと。ヘルハウスとは一時期の中島らも宅の俗称で、失業中の中島らものもとにジャンキーたちが集って昼夜ドラッグに溺れていたことから、ジャンキーたちの間でこう呼ばれていたのだという。
 主人公大島らむの家に集ったジャンキーたちが繰り広げる、ドラッグとセックスと狂気と死の物語。アル中、分裂症、万引き常習犯、中毒者、そして不条理なまでに訪れる死。
 しかし物語は自身さえも冷めた目で見つめる語りによって描かれており、決して感傷的にならない。登場人物たちの悲哀が時に辛らつに、時にユーモラスに描かれている。

 なお、主人公がラリっているシーンでは、中島らもが傾倒していたシュールレアリズムの技法「自動筆記」が試されている。自動筆記とは、何かに憑依されたようなお筆先の状態で思考を垂れ流すように記述する手法のことだという。その手法で例えば以下のような一節が生まれる。

わしづかみにされた心臓、コンクリートの上を這いまわる太刀魚、ピス・ファクトリー
 
 そこには論理的なつながりが欠落しており、連想の連鎖によってのみ編み出される言葉の流れのようなものが生み出される。なお、この自動筆記で書かれた文章は、各章の終わり4~5ページにわたり延々と続く。
 中島らもは、普段は泥酔して気がついたら原稿が上がっていたといったような小説の書き方をしていたというが、この「お筆先」に関しては、完全に素面の状態で挑んだのだそうだ。

 この作品の感想を一言で言えば、とにかく衝撃的。
 誰にでも楽しめる作品だとは言わない。みんなに読んでほしい作品だとも言わない。
 なぜなら、ロックとはそういうものだからだ。

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作品名: 権現の踊り子
作家名: 町田康
ジャンル: 短編集

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆★★★★★★
ス:☆☆☆☆★★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
町田康のこの他の小説 
【書評・あらすじ】
 川端康成賞を受賞した表題作「権現の踊り子」を含む全6話が収録された短編小説集。

 笑える話としては、「矢細君のストーン」「工夫の減さん」「権現の踊り子」あたりがよかった。
 いずれも最低の、それは生活水準と人間性、二つの意味で最底辺の人たちが織り成す物語ばかりだった。
 町田康はエッセイ集『つるつるの壷』の中で、若かりし日に町で見た「時代や文化に取り残された残骸のような人達」を「忘れえぬ光景」だと語っている。
 この人のルーツにはそんなふうに、いわゆる文化的なことから脱落してしまった人たちの姿があるのだと思う。

 最底辺の町、最底辺の住宅、主人公はそんな「灰色の町の悲しい人間」。
 あるとき主人公はそこの管理人になぜか棲みついている誰か知らないおばはんからそそのかされ、権現市に剃刀を求めて向かうことになる。
 しかし訪れたその権現で、どういうわけか主人公は「最先端流行野郎」と見込まれしまうのだった。
 さて、どうなることやら。

 町田康を読むときはある程度の覚悟が必要だと思う。
 つまりそれは、面白い話は面白いが、分からない話はまったくわけが分からない、という覚悟だ。
 こと、この短編集はその「町田康らしさ」が顕著だった気がする。
 けっこう頑張って読んだぜ、ガッツでさあ。

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