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栗田有起の小説【書評一覧】 > オテルモル
ビルとビルの間にわずかに開いた隙間。その細い空間を横向きの姿勢になってなんとか入り込んだところにエントランスがある、地下13階建ての風変わりなホテル。「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」。
ビジネスホテルとして、客に「最高の眠り」「最良の夢」を提供することを目的としている。
新しくそこに受付として勤めることになった主人公、希里。
その「誘眠顔」を見込まれてホテルの受付に採用されたのだ。
とここまであらすじを書いていて、相変わらずだなーと思った。ちなみにこれはいい意味だ。
栗田有起は以前に中編の「ハミザベス」を読んだが、どうもこのしれっとしたとぼけ具合というのがこの人の持ち味らしい。
だいたいなんなんだ、「誘眠顔」って。
物語の筋としては、希里のホテル・モルでの勤務の様子と珍妙な客たちが描かれるのと平行して、希里の家族、とりわけ双子の妹、沙依との過去が描かれていく。
妹の沙依は中学生の頃から壊れ始め、現在は覚せい剤の治療のために入院している。家にはその娘の美亜と、沙依の夫で希里の元恋人でもある「西村さん」がおり、希里はその二人と複雑な構成の家庭を形成している。
実はこのように、物語はややこしくて結構ダークなはずなのだ。
しかし栗田有起の面白いのは、ギャグがそうであるように、この暗いテーマさえもさらさらと流れてゆくことだ。
とてもライトで、さも自然なことのように流れてゆく。
この作品については、「ユーモラスでさらりとした読み口のシリアスドラマ」というどっちなんだかよくわからない言葉で評しておく。しかし読めばわかってもらえると思う。
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原宏一の小説【書評一覧】 > 床下仙人
表題作「床下仙人」、「てんぷら社員」「戦争管理組合」「派遣社長」「シューシャイン・ギャング」の5話が収録された短編小説集。 いずれもモーレツな会社員が主人公となっており、そうした会社社会へのアイロニーがこめられた一冊となっている、らしい。
あらすじは以下のとおり。
1.床下仙人
ようやく購入したマイホームに、ある日ひょっこり床下から仙人のような男が現れる。さすがにビビッたが、男は仙人のようなヒゲをたくわえており、愛嬌のある顔をしていてどこか憎めない。床下からさも当然のような顔をして現れたこの男はいったい何者なのか。
2.てんぷら社員
北九州から本社に栄転してきた50代の平社員。どう見てもしがない中年なのだが、本社にくるなりすごい早さで出世していく。この男はいかなる謎を秘めているのか。
3.戦争管理組合
あるときマンションに帰ると、マンションの玄関口で散弾銃を抱えた女子大生に脅される。世に宣戦布告したマンションの女たちと、それに巻き込まれてしまった主人公の数日間。
4.派遣社長
主人公が勤めるいかにも文科系のアーティスト揃いのデザイン会社に、バリバリの体育会系の派遣「社長」が派遣されてくる。彼の出現によってもたらされるデザイナーたちの混乱と邂逅。
5.シューシャイン・ギャング
信号待ちをしていると、突如少女に靴を磨かれる。少女が一人で生きてゆくために作り出した、新たなビジネスなのだという。仕事にも家族に見捨てられた主人公と、家族を見放した少女との、奇妙で心温まる関係を描いた良作。
どの話も「世も奇妙な物語」のようなテースト。今調べたら、この原宏一という人は実際に「世にも」の原作で採用されたこともあるらしい。まあ他の短編集の話だけど。
「世にも」ファンの僕としては結構楽しく読めました。今後も読んでみたい作家入り。
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