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東野圭吾の小説【書評一覧】 > 名探偵の掟
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ブックオフの商品券で買った売れ筋の本シリーズ第二弾。
東野圭吾ブランドで値段が上がっているんだろうけど、高いだけの価値はあった。まあ僕はブックオフから気に入られているのでただだったんだけどね。
特殊だけどウェルメイドな笑える本。
よれよれのスーツにもじゃもじゃ頭、トレードマークの骨董品のステッキをくるくる回す、頭脳明晰、博学多才、行動力抜群、あの有名な名探偵、天下一大五郎…のそばでいつも見当違いな捜査ばかりをしている警部、大河原番蔵がこの小説の主人公だ。
大河原は自らが、「探偵もの」に定番の、主役をひきたてるための道化的脇役であることに気づいている。だからたとえ途中で真相に気づいてしまっても、気づかぬフリをして、主役の天下一が謎を解き明かすのをバカのフリをして待たなければならない。
しかし実は自分が「探偵もの」の「定番」を演じていることに気づいているのは、大河原一人だけではない。名探偵の天下一も、そしてその他の登場人物たちも、実は自分が「定番」に沿って行動せねばならないことに気づいており、もっといえば、みんなそのことに飽き飽きさえしている。
そしてこの天下一シリーズを読んでいる読者にまで飽きられていることに気づきつつ、彼らは定番のあれやこれやを演じ続けなければならない。
そんな登場人物たちの苦悩を描いたバカ推理小説短編集。
定番の事件、定番の設定、定番の登場人物、定番のセリフ。無茶な舞台設定、非論理性、ご都合主義。
これらすべてを、皮肉を込めて笑う。そんな一冊だった。
そういえば『超・殺人事件』にも東野圭吾自身が属する世界へのアイロニーがぷんぷんにおっていたが、ニュアンスとしてはかなり近い作品だと思った。
『超・殺人事件』が推理小説作家側の事情を風刺したものだとすると、この『名探偵の掟』は登場人物側の事情を戯画化したものだといえる。
それにしても強烈なアイロニーだった。
「犯人を捕まえてから、どうやって密室にしたのか聞き出せばいいんだわ。あたしは特に聞きたくもないけど」なんてセリフを、あの東野圭吾が書いてしまうんだから、なんだかすごい。
なお、本書は2009年6月にテレ朝でドラマ化。金曜の11時過ぎにやってる例の時間帯である。あーそーいややってた気がするにゃ。この作品が原作だったとはつゆ知らなかったけど。 主演は松田翔太(天下一役)。そして大河原役に木村祐一。それから大河原の部下の女刑事役(原作にはない)に香椎由宇だそうだ。 なんだかこの配役自体が作品内で皮肉られていそうなものだ。まあいいけど。 ドラマもドラマでいかにもくだらなそう(褒め言葉)でよさ気。 |
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浅田次郎のエッセイ【書評一覧】 > 勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛
作品名: 勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛 作家名: 浅田次郎 ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 浅田次郎その他のエッセイ |
先日床屋に行く際に、染髪中に読もうと買っておいた一冊。そういうちょっとした暇にはやはり笑えるエッセイが一番だ。
ところで話は早速逸れるが、その床屋で美容師に「誰かに似てるって言われるでしょ」と言われた。まあ誰かといえばサッカー解説の小倉さんには似ているというか、われながらそっくりであきれるほどなので、どうせ小倉さんだろうなと思いつつ「誰ですか?」とほとんど「小倉さんですか?」の口調で尋ねると、「速水もこみち君に似てますね」といわれた。言われてしまった。ははは。
見え透いたお世辞もあったものだが、いくら見え透いていても嬉しいものは嬉しい。実は5年も前からもこみち君を多分に意識して生きている僕だ。苦節5年、ようやく”1みち”入ったわけだ。
閑話休題。とにかく床屋の染髪といったちょっとした暇を埋めるには、軽く笑えるエッセイがもってこいだと思いこの一冊を持っていった。先日、同シリーズの『満点の星』を読んだばかりで、まあ適度に笑ってさくさく読めるかなと思っていたのだ。
が、結果から言うと、暇を埋めるという意味では、この本はちっとも役に立たなかった。
まず、最初に収録された「禽獣について」では、斉藤民子、小笠原チョロ、平岡パンチ、稲田ミルク、という名の飼い猫たちのことが語られている。いっとくが僕は猫ネタに弱い。擬人化されたり、喋ったりされたら、その時点でかなり危ない。
そして引き続き、兄と自分について語った「近親憎悪について」。幼い頃は似ても似つかなかったのに、年を取って久方ぶりに親戚の集いに行ったら、デブ、ハゲ、ヒゲ面、なぜか自分と瓜二つの兄がそこにいて親戚をパニックに陥れたという。
と、この辺りでこの本はお役御免となった。というのも、「斉藤民子」の時点で、あーなんか危ないなーとは思っていたのだけど、そこをして、立て続けに瓜二つの兄弟のくだりなのだ。
すでに必死に笑いをかみ殺しながら読んでいたところを、最後の一押しが加わったものだから、笑いは勢いよく僕の口を吐き、「ポンッ」と正体不明の音を立てて僕は吹き出していた。
そして直ちにこれ以上は危険と判断し、目の前においてあった「鬼嫁VS鬼姑 郵便局員が見た隣の家族の裏の顔」とか書いてある極力つまらなそうな雑誌を手に取ったのだった。
この本は浅田次郎の人気エッセイシリーズ『勇気凛凛ルリの色』の2冊目にあたる。
先日読んだ最終巻の『満点の星』では、人気作家の超多忙な日々を綴った印象があり、話題の中心は、エッセイが書かれた当時の日々が主だった。一方でこの『四十肩と恋愛』が書かれた当時はまだそんなに多忙ではなかったようで、話題の中心は多岐にわたる。
特に浅田次郎の過去(幼少期は富豪の息子、しかし破産して一家離散、親元を離れて暮らし、高校卒業後は自衛隊入隊。そして除隊後はアウトローな期間があり、後に作家に転進)は稀な経歴で、とても面白い。
内容の面白さしかり、笑える具合しかり、染髪中の危険度しかり。かなり好評価の一冊だった。
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