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恩田陸の小説【書評一覧】 > ドミノ
恩田陸の作品は初めて読んだけど。なにこれ。めちゃくちゃ面白いじゃないの。
1億円の大口契約の入金締め切りを数時間後に控えあわただしい生命保険会社。舞台『エミー』のオーディションに挑む10歳の少女。美人の従姉妹を従えて別れ話を切り出そうとする青年実業家とその女。次期幹事長の座をかけて推理を競い合う大学の推理研究会のメンバー。俳句のオフ会のために初めて地方から東京を訪れた初老の男。日本を訪れていた人気映画監督とそのペット。そして「試作品」を抱えた謎の男。
これだけの登場人物たちが織り成す物語が、この小説ではそれぞれに同時進行で進む。
その描き方が鮮烈だ。1つの話しが少し進展し、読者が気になり始めたところで、次の話に移る。そしてまた次の話が少し進展して読者が気になり始めたところで、さらに次の話に移る。
このようにして、物語は日めくりカレンダーのように、くるりくるりとその舞台を変える。
そして始めはばらばらだった物語はある瞬間に近づくにつれてその距離が近づいてくる。
そして物語は、いくつもの勘違いやすれ違いを経て絶妙に絡み合い、いよいよクライマックスというところで一気に衝突する。
方々からぱたりぱたりと転がってきた物語が、加速度を増しながら最後の一点に集約する。
なるほど、まるでタイトルどおり、これは『ドミノ』だ。
文庫本にして376ページの大作だが、小説の中ではわずか5時間しか経っていない。それだけの物語が凝縮されている。そしてあまりのテンポのよさに、読む側も大作であることを忘れてあっという間に読みきってしまう。そういう作品だ。
この『ドミノ』の作風は、笑える本ではないのでここで紹介することはないと思うけど、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』を彷彿とさせるものがあった。一つ一つのシーンを気になるところで転々と転がし読者に本を閉じさせないところとか、まるっきり『ダ・ヴィンチ・コード』のずば抜けた面白さそのものだ。
ただ大きく異なるのは、この『ドミノ』はそのスリリングな展開に加えて、ギャグとユーモアに彩られているということだ。笑えてスリリング。
久々にアツい笑える名作だった。
他にも恩田陸に笑える作品はあるのだろうか?ご存知の方教えてください。
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原宏一の小説【書評一覧】 > ムボガ
会社員の扶美夫、工務店を営む卓造、ジーンズショップを営むタコ、役所勤めの信太郎。
4人のオヤジが昔とった杵柄でバンド「コレステローラーズ」を結成する。
以来5年、地味な活動を展開してきたオヤジバンドコレステローラーズであったが、町の祭りで知り合った気のいい黒人ムボガの手によってアフリカのトポフィ共和国で大うけする。そしてライブのためにトポフィにわたった扶美夫たちは、ビートルズばりのスターとして迎え入れられる。
それで勢いづいたコレステローラーズ。日本でのデビューを夢見てそれぞれ職を離れ、国内での音楽活動を真剣に始める決心をする。しかし上京し、いざ活動を始めてみると、思いも寄らなかった壁に直面することとなる。
アフリカのビートルズとしてその名を馳せ、そしてビートルズのように社会問題と虐げられるものたちとの間に立つことになるコレステローラーズ。物語は主人公たちを始め、読者の思いもよらなかった方向に転がってゆくが、それはある意味で、60年代にロックが果たした役割とリンクしている。
これまで読んだ原宏一作品と同様のテーマを見出すとすれば、「社会に対する風刺」ということになるのかな。
自分の家の床下に住んでいた謎の男の話(床下仙人)とか、不気味な善意の押しかけボランティアの話(天下り酒場)とか、原宏一は世にも奇妙な物語的な少し変わった小説を得意としているのかと思っていたけど、この『ムボガ』を読んで、なんだこんなリアリズムに則った普通の物語も書けるんだと感心した。
その意味で楽しみやすい小説だと思う。
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