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宮藤官九郎のその他の本【書評一覧】 > 木更津キャッツアイ
「木更津キャッツアイ」レギュラーシーズン。
ドラマで放送されたキャッツアイの全ての回(全9話)の脚本が収録。そのほか「まえがき」ではクドカンによるドラマの誕生秘話と各回へのコメント、巻末にはキャッツメンバー(岡田准一、桜井翔、佐藤隆太、塚本高史、岡田義徳)による解説が収録されている。
なにぶん9話も収録されている、というか多くの人がドラマを見たと思うのであらすじは大いに割愛する。
ざっといえば、余命半年を宣告された主人公ぶっさんと木更津に暮らす仲間達による、「青春臭さ」からことごとく涙の要素をぬぐい去った青春ドラマ。
あえて余命半年の主人公を使った上で、終始暗く悲しいお涙頂戴の話にだけにはしまいというところに宮藤官九郎の強いこだわりを感じた。むしろ、当の死ぬシーンが一番笑えるんだから、このこだわりはすごい。
人を泣かせる話を書くのは案外簡単だ、むしろ人を笑わせることのほうが難しい、といったことを中島らもが言っていたが、それに通じるこだわりだと思う。
ドラマの手法としては、ストーリーの本筋を「1回表」その真相を「1回裏」としてネタあかしをしていくところが面白い。その際、本筋では小ネタと思っていたものが実は「裏」では真相に関わっていたりして、なるほどこれは面白いわけだ。
文庫で2段組、480ページ。かなりのボリュームだが、本当にさくっと読めてしまった。小一時間。
ところで『日本シリーズ』の中で、ふいに「ヤマクラ」という名前が出てきた。キャッツメンバーが黒モーコ+アマゾネス軍団の暮らす島に漂着したシーンだ。
そこでは別にヤマクラのタネあかしはなかったので、いったい何のネタなんだろうと気になっていたのだ。
それが、この本編を読んでみてようやく分かった。
1話のセリフになんと「ヤマクラ」が出てきたのだ。
アニ 「ぶっさんはキャッチャーだから山倉でいいとして」
公平 「いくねえよ」
なんとこれだけ。
本人は出てこず。
わかんねえよ。
それで山倉の部分に注が付いていたので何者か分かったんだけど、どうも78年にドラフト1位で巨人に入団した山倉和博のことらしい。
わかんねえよ。
こんなの本で読んだから気づけたようなものだと思う。いくらなんでも小ネタすぎ。
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原宏一の小説【書評一覧】 > へんてこ隣人図鑑
23話のショートショートと短編を1本収録したユーモアショートショート集。
いかにも原宏一らしい、世にも奇妙な物語になりそうなちょっぴりシュールなユーモアがてんこ盛り。
最後の一行でオーと納得させられたりアハハとかニヤリと笑わされたり。オチの部分に力が入れてあり、いかにもショートショートといった一冊となっている。
以下いくつかあらすじ。
きかれる男
とにかくやたらに人から「聞かれる」フミオ。定番の道順に始まり、印鑑証明からホッケの味まで尋ねられ、しまいには刑事から犯人の行方を聞かれる始末。あるときそんなフミオが電車のホームにいると、電車の遅延アナウンスが流れる。すかさず「電車、いつ来るんですかねえ」と尋ねられるフミオ。さあ、と答えるとまた別の方向から「振り替え輸送、やんないのかしら」との声。そして駅員でもないフミオに、どういうわけか周囲から次々に質問が浴びせられる…。
見るな
バスを待つ人は、何を意図するわけでもなく、バスがやってくる方向を見てしまうものだ。バスが来るほうを眺めていたからといって、バスが早く来るわけではない。また、バスが来れば気づかないはずはないのだから、わざわざバスのほうを見ている必要もないはずなのだ。にも関わらず、人はなぜかバスを待つ間、バスのやってくる方角を眺めてしまう。
この物語の主人公もやはり、何の気はなしにバスの来る方を見ていた。しかしそんな主人公にふいにこのような言葉がかけられる。
「やめてくれませんか」
穴を掘りたい男
タカダミツルは穴を掘りたい。とにかくただひたすらに穴を掘りたい。新品のシャベルでざっくざっくと穴を掘りたい。それは植林などの目的のためであってはならない。純粋な行為として、穴を掘りたいのだ。
しかし現代という時代は、このような願望を抱いてしまったミツルにとって、非情かつ過酷な時代だった…。
百年モグラ
掘削と埋め立て。これらが世界のいたるところで行われている。おかげで地球の表面のバランスは著しく崩れてる。そしてコマが円盤部のバランスが悪ければきちんと回らないように、地球も今、アンバランスな比重によってその回転軸が歪もうとしている。
今、その問題を解消するために、通称『百年モグラ』作戦が実行されていという。東京を意図的に地盤沈下させ海に沈めることで地球の表面のバランスを保とうという計画なのだ。しかし事態があまりにも大きすぎるため、その事実はごく一部の人々にしか明かされてはならないという。
では、その選ばれた「ごく一部の人々」とはいったい誰のことなのか。
このほか19話のショートショートと、1話の短編小説が収録されている。
一話一話が短いのでさらっと読め、なおかつ原宏一ワールドを堪能できる一冊。
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