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三谷幸喜のその他の本【書評一覧】 > 気まずい二人
三谷幸喜と女性ゲストとの14回にわたる対談集。
とにかくタイトルどおり「気まずい」がテーマで、人見知りであがり性の三谷幸喜が、初対面の人との会話にしどろもどろになる様を克明に描いた対談集となっている。
ゲストの女性陣はアナウンサーの八木亜希子(あ、読んでる最中は気づかなかったけど、明石家サンタの人だ)、女優の十朱幸代、西田ひかる、桃井かおり、森口博子、安達祐美(当時15歳)など13名。当時、三谷がいかにも緊張しそうな相手を意図的に集めたのだそうだ。
この本の読み方としては、冒頭の「この本の使い方」で三谷自身が以下の3点をすすめている。
①普通に対談集として読む。
②戯曲として楽しむ。
③あがり性な三谷が初対面の人との会話を克服していくドキュメンタリーとして楽しむ。
しかし、この本ははっきりいって対談集としてはさっぱり面白くない。対談集と銘打ちながら、相手からここまで何も引き出さないものも珍しい。タイトルどおり本当に三谷が気まずそうにしているだけで、とにかくうっすーい会話なのだ。ナンシー関とリリーフランキーの対談集『小さなスナック』の会話の濃さを見習ってほしい。そんなわけで①の楽しみ方はペケだ。
また、③の克服ドキュメンタリーの件。実際のところ僕は三谷の対人関係の成長過程を楽しみにこの本を読んでいた。しかし僕にはどうも、対談の初回から最終回の間に三谷が人見知りを克服していっているようにはとても思えなかったのだ。はっきりいって初回から最期までずーっと気まずいままだ。よってこの楽しみ方もペケ。
ただ、それでもこの本にそこそこの高評価をつけたのは、この本が一種のドラマの脚本として面白かったからなのだ。
つまり②の戯曲として楽しむ、これはかなりありかもしれないと僕は思っている。
初対面の気まずい二人が空気を読みあって、そしてときには実際に気まずい沈黙を流したりして、それでもなんとかその場を取り繕おうとしている。
たとえば森口博子との回では、話を振らなければとお互い気を使いすぎて「私も…」「だから…」と発声がかぶってしまったりしている。
そんなところに、地味だけどすごく共感できる人間臭いドラマがあるのだ。
そういった地味な人間ドラマを楽しむのがこの本の正しい楽しみ方ではないかと思う。
ところで本書の中で三谷が困ったら話題にしていた枝豆と大豆ともやしの話、あれは本当なんだろうか。
枝豆を乾燥させると大豆、大豆から芽が出てくるともやしになるって話。
だから枝豆と大豆ともやしは全部同じものだっていうんだけど、本当の話?教えて、エロい人。
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三浦しをんの小説【書評一覧】 > 格闘する者に○まる
作品名: 格闘する者に○まる 作家名: 三浦しをん ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ 三浦しをんその他の小説 |
三浦しをんのデビュー作。
三浦しをん自身の就活体験をもとに書かれたらしい長編小説。
なおWikipediaによると、就活で出版社を受けた際、入社試験で書いた作文から文才を見出され、面接官からのススメでウェブエッセイ(のちに『しをんのしおり』として書籍化)を執筆し始めたのが文壇デビューに繋がったという。
デビュー作で就活をテーマにしたのも納得だ。
まあそれはさておき。
文学部に通う大学4年生、可南子。
漫画好きでマイペース、面倒臭がりで出不精。そのキャラクターはエッセイから浮かび上がってくる三浦しをんそのもの。ちなみに自身をモデルにしているなら、大学は早稲田なのかな。エリートコースの大学っぽいことが劇中でもほのめかされているし。
そんな可南子も周りからはだいぶ出遅れてしまったものの、いよいよ就職活動に乗り出す決心をする。漫画を愛するゆえ、志望は出版業界。漫画に熱い思いをいだきつつ、出版社の面接を受けまくることに。
住まいは実家暮らし、継母と半分だけ血の繋がった弟とともに暮らしている。唯一の実の家族である父は政治家で、滅多に家には帰ってこない。
家族は政治的な、というか本当に政治の問題でかなり微妙な関係、微妙な境遇にある。
そんな境遇の中、遅々として決まらない可南子の就職。
と表面上は暗いというか、話の設定はかなり暗いはずなんだけど、ところがどっこい、マイペースで終始ユーモラスなのがこの小説の魅力なのだ。
まず就活に関しては、可南子を始め文学部の友人ニキ君にも砂子にもさっぱり緊張感がない。
就活は僕にも少しは経験があるけど、どよーんとしてすごく嫌だなーというダークな印象しかないものだ。
しかしその辺の暗さがこの小説にはちっともなくて、キャラクターたちがのんびりと構えている様が実にほほえましい。あの就活にいだいていた暗たんたる気持がちょっとバカらしくなる。
また家族の問題も、なんだかんだでいい加減でいい人の父を始め、要領よくしれっと問題から身をかわす弟、家族に無関心なようでいて実は案外そうでもない継母と、重大なはずの問題の重大さがちっとも重くのしかかってこない。
設定はかなり暗いはずなのに、「まあいいやー」なんてみんな終始のほほんとしているのだ。
劇中ではこれといって劇的なことが起こるわけではない。いや、というかわりと劇的なことがおきているのかもしれないけど、その「劇的」感がちっとも強調されない。とにかくテーマや舞台設定とは反して、まったくのんびりしている。
キャラクターたちの超然とした、ときに人を喰ったような性格が魅力的な小説。
気楽な笑える小説を読みたいときに。
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