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浅田次郎のエッセイ【書評一覧】 > 勇気凛々ルリの色 福音について
作品名: 勇気凛々ルリの色 福音について 作家名: 浅田次郎 ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 浅田次郎その他のエッセイ |
『勇気凛凛ルリの色』、『四十肩と恋愛』に次ぐ浅田次郎エッセイの人気シリーズ第3弾。
そしてこの『福音について』のあとに出版された『満点の星』がこのシリーズの最終巻になる。
僕はブックオフで見つけた順に本を買っちゃうので、読む順番がばらばらになることもしばしばなのだ。まあこのシリーズに関してはそれでまったく問題なかったけど。
この本のあとがきで浅田次郎自身が書いていたけど、最初の『勇気凛凛~』のころは作家としてまったくの無名時代、『四十肩~』のころはようやく少しずつ作家で食えるようになってきたころに連載されていたらしい。
そしてこのあとに出された『満点の星』のころは超人気作家となり多忙すぎて死にかけていた。
そんな奇しくも浅田次郎の出世を辿る形で連載されていたのがこのシリーズ。
そして僕個人としては読む順番は多少前後してしまったが、シリーズ的には実はこの『福音について』が山場だったと思った。
というのもこの巻で、いよいよ『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞した当時の連載にぶつかるからだ。
とはいえ大半はまだそこまで多忙を極めていたわけではないらしく、前の二冊と同様多岐にわたる話題に触れる余裕がみられる。ドロップアウトしていた高校の同窓会に呼ばれた話(「大邂逅について」)がなんともよかった。
それで直木賞受賞の話題はラスト50ページほどにあたるのだけど、この辺のくだりがとにかくドラマチックで面白い。さすがに興奮していたらしく、直木賞の話題はしばらく続く。
ちょうど一年前に落選していた恐怖、発表当日の喧騒、編集者たちの泣かせるほどに粋な心遣いetcetc。
浅田次郎のエッセイは、エッセイというより物語として面白いことがしばしばだが(エッセイなのにずっと前の話題が伏線に《というか生きてたら本当にそういうことになっちゃったわけだから意図していたわけではなく偶然伏線になっちゃったんだろうけど。ってカッコの中にカッコ使っちゃった。あんまりカッコが長いと読んでるほうは不安になるよね。このカッコいつまで続くんだろうって。カッコの前の話題をすっかり忘れちゃったりしそうで。それからカッコの「閉じ」がなかったらとか思うと本当不安よね。宇宙に投げ出されちゃったような気持になるよね、きっと。いっそここでそれをやってみようかしらなんて》なってたりするからびっくり)、この直木賞のくだりは笑えて泣けて、かなりよいです。
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景山民夫の小説【書評一覧】 > トラブル・バスター
作品名: トラブル・バスター 作家名: 景山民夫 ジャンル: 連作短編小説 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ 景山民夫その他の小説 |
テレビディレクターとして働いていた主人公、宇賀神邦彦。
現在は番組を9本コケさせた落とし前として、テレビ局内で起こるあらゆるごたごたを収める部署、製作庶務係に追いやられている。
製作局長の田所からの「バカヤロー!」の罵声とともに、宇賀神のもとにテレビ局内のトラブルが持ち込まれる。そして宇賀神はそれらをあの手この手でことごとく解決してゆく。
そんな宇賀神のことを人は「トラブル・バスター」と呼ぶ。
舞台は都会のテレビ局だが、雰囲気はまるで荒野。
カウボーイハットを被り、悪人をバキューンと撃ち殺しては、ふん、またつまらぬものを撃ってしまった、みたいな。
いやごめんなさい、この手の小説はてんで読まないので例えが貧弱だったね。というか、西部劇と時代劇が混ざっちゃってたね。まあとにかく、ずばりいって、ハードボイルドなのだ。男の美学というか。紅の豚的かっこよさ。
番組企画の盗用、クイズ番組の八百長(クイズダービーとはらたいらがモデルっぽい)、美術セットの盗難、人気若手歌手の妊娠騒ぎなどが宇賀神のもとに持ち込まれ、それをドライでクールに、しかしときに優しく解決してゆく。
特に各話のオチとなる悪人の懲らしめ方、落とし前のつけかたがいちいちキザでダンディなのだ。
そんな宇賀神のトラブルバスターとしての活躍を描いた連作短編集。
面白くてさくさく読んだが、やはり人気だったらしく、同シリーズが4冊ほど出ているらしい。またコミック化、映画化もされているとのこと。
連作短編小説なので登場人物や設定は同じだが、1話完結で30ページほどの短編なので、ちょこちょこっとした暇に読める。
テレビ畑出身の景山民夫らしく、テレビ局内の内情がやけにリアルでよかった。
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