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笑える本を読もう! > 景山民夫の小説【書評一覧】 > トラブル・バスター3 国境の南

作品名: 国境の南
作家名: 景山民夫
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
景山民夫その他の小説 
【書評・あらすじ】
 どうもご無沙汰。
 ってほどでもないけど、4月より住所も仕事も大きくかわって、なかなかてんやわんやのフレッシュマンしてますよ。29歳でフレッシュマンってのもあれだけど、まあそれが当たり前の業界なのだ。そんなわけであわただしくも楽しい日々を送っています。イエイ。

 さて、『トラブル・バスター3 国境の南』について。
 景山民夫のトラブルバスターシリーズ第3作。
 前2作は連作短編小説だったので、てっきりこの1冊もそうなのだと思って読んでいたけど、意外なことにガッツリ1話の長編収録だった。
 シリーズですっかりおなじみトラブルバスターの宇賀神邦彦のもとに、こらまたすっかりおなじみ田所局長の「バカヤロー!」の一声と合わせてテレビ局内のトラブルが持ち込まれる。
 メキシコロケの帰り、カメラマンの伊藤知広がVTRを持ったまま失踪してしまった。このままでは関東テレビの長寿番組「月曜トップ」に穴を開けてしまうのでなんとかしろ、というのが局長の命令で、なんとかならないと「関東テレビリゾート開発北軽井沢案内所の管理人に飛ばすぞ、わかったか、バカヤロー!」とのことだった。
 まあここまではいつもの調子。
 しかしこの作品を長編小説たらしめた問題は、そのカメラマンのパスポートを持った礫死体が発見されたことなのだ。人の死がからんでいる以上、手短に済ますわけにはいかないものね。

 ところでこの事件の調査の折、宇賀神はカメラマン伊藤の娘瞳とチームを組み、協力しあって真相を究明することになる。この瞳がもう絵に描いたようなヒロイン。容姿端麗、聡明で何事にも物怖じしない。ハードボイルドに若くて賢くて可愛いヒロイン。これはますますもってジブリの『紅の豚』じゃないか。
 おなじみのハードボイルドにヒロインの要素も加わって、いよいよ盛り上がってきた同シリーズなのであった。

 ところでこのヒロイン伊藤瞳、時代の違いというのが露骨にでてしまっていて惜しい。
 というのも、瞳のイメージが「ゴクミに似ている」と描写されているからなのだ。今となってはゴクミの女子高生を想像するのは極めて難しい。というか下手をするとゴクミを知らない読者も多い気がする。
 そこでこのあたりは読者のコチラがうまいこと頭の中で好みのアイドルかなにかにイメージを変換しないといけないらしい。で僕は誰をイメージして読んだかというと、これはもうダントツで志田未来ちゃんだ。がんばれ未来ちゃん!おじさん応援しているぞ!

 そんなわけで、長編だったので意表をつかれたけど、相変わらず本編から初刊本あとがきにいたるまで、隅々までハードボイルドな1冊だった。
 同シリーズの『トラブルバスター』と『俺とボビー・マギー』を合わせてどうぞ。

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作品名: 家日和
作家名: 奥田英朗
ジャンル: 短編集

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆☆☆☆☆☆★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
奥田英朗その他の小説
【書評・あらすじ】
 家庭にまつわる話しが6話掲載された短編小説集。
 どの話も激的な展開はないのだけど、どれもほっかりしていて、読んでいてとても心地よい短編集だった。久々に人に大いにおススメしたくなる一冊だった。
 以下いくつかあらすじを。

サニーデイ
 不要になったピクニック用テーブルを、何とはなしにネットオークションに出品した主婦紀子。
 ネットオークションでの購入者とのやりとりや、「サニーデイさんはとてもいい出品者でした」なんていう取引後の「評価」を得ることに喜びを感じ、次第に不要なものを売るためというよりも、ネットオークションという行為それ自体にはまってゆく。
 この話はネットオークションをやったことがある人ならいたく共感できると思う。というかおそらく奥田英朗自身がどっぷりヤフオクかなんかにはまったことがあるに違いない。でなければあのオークションの楽しさ、危うさをここまでリアルに書くことは不可能だと思う。

ここが青山
 裕輔が遅れて朝礼にもぐりこむと、折も折、朝礼では会社の倒産が発表されていた。《ビッグなサプライズ。本日当社倒産!》そのことを妻の厚子に極力明るくメールで告げると、厚子はすぐさま妊娠時にやめた会社への再就職を決めていた。
 かくして晴れて専業主夫となった裕輔。どうも会社勤めより主夫業が肌に合っているらしい。
 しかしなかなか世間には男が喜んで主夫をしていることが分かってもらえず、会う人会う人に「人間いたるところに青山ありだ」なんて励ましの言葉をかけられてしまう。

家においでよ
 妻の仁美との関係が冷め、しかし取り分けて事情があるわけでもないのに即離婚というのは世間体が悪いので、ひとまず冷却期間として別居することになった正春。
 インテリアにこだわる仁美は、部屋のよさ気な家具を一式もって、家から出て行ってしまった。
 さて家具が消えてガランとした部屋に残された正春。別に何の感慨もないんだけど、さすがにだだっ広い部屋にぽつんといるのは嫌なので、自分で家具を買いにいくことにする。
 しかしこの家具選びがやたらと、面白かった。
 これまで妻にまかせていた家具選び。これをすべて自分好みの家具をそろえる楽しさに目覚める正春。
 幸か不幸か手元にはマンション購入用に蓄えていた金があったこともあり、自分好みの家具を次々とそろえてゆく。
 かくして完成した「正春の部屋」は、実は既婚男性がだれでも裏やむ、「男の城」だった。

妻と玄米御飯
 最近賞を受賞したばかりの小説家、康夫。
 突然降って湧いて出たあまりの生活の一発逆転に、一家揃って金の使い道に戸惑いを覚えていた。
 しかしあるとき食卓に並ぶと、御飯が玄米御飯になっているではないか。
 なんでも妻がロハス(健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイル、とのこと)にはまってしまったらしいのだ。
 どうも妻は佐野という近所に住む美男美女夫婦に触発されてロハスをはじめたらしい。
 まあそれはいいのだが、まずいことに康夫の職業は小説家だった。
 現実の滑稽さを皮肉らずにはいられないタイプなのだ。
 そんな康夫にとって、ロハス信仰を妄信する信者たちは、かっこうのネタの材料だった。
 ご近所さんや妻を売るか、ネタを諦めるか、康夫の葛藤が始まる。

 ほか2編。
 解説は漫画家の益田ミリ。なんでも奥田英朗がまだスポーツコラムニストで「延長戦に入りました」を連載していた頃からのファンで、当時ファンレターを出したことがあったらしい。
 そのファンレターにはきちんと本人から直筆の手紙が返信されてきたのだとか。
 なんと書いてあったかはこの本の解説で確認してね。

 以上、福岡での更新終わり。
 明日からは鹿児島へ移住します。

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