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みうらじゅんのエッセイ【書評一覧】 > マイブームの魂
作品名: マイブームの魂 作家名: みうらじゅん ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆★★★★★ ス:☆☆☆☆☆★★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ みうらじゅんのその他のエッセイ |
「マイブーム」という言葉をご存知か。
などというとバカかと思われるほどに、この言葉は日常用語として定着している。
しかしこのマイブームなる言葉が1990年代にぽっと出てきた言葉で、さらにはその語源がみうらじゅんにあったことを知っていたろうか。
僕は知らなかった。
みうらじゅんは幼い頃から「仏像」に魅せられていた。
しかしその魅力は他者には(正確には仏友のいとうせいこう以外には)なかなか理解されなかった。
ただみうらが仏像に抱いている思い入れは自分の中の「大ブーム」と呼ぶべきレベルのものだった。
そこで、この「大ブーム」と語感が似ていることから、一般的には知らないが少なくとも自分にとっては大流行している状態を指す「マイブーム」という言葉が生まれたのだそうだ。
なおマイブームはみうらじゅんによって1994年ごろに使われ始め、1997年に流行語となる。これほど定着しているのに案外歴史は浅かった。
さて、本書『マイブームの魂』は、マイブーム発案者みうらじゅんが実際にマイブームなものについて方々に書いた文章を一挙に集めたエッセイ集になっている。
奥村チヨ(※あんぬぁたとぉ~あったそのひかるぁぁぁあ♪の人)、仏像、女装、ボブディラン。
文庫にしておよそ300ページの本書だが、なんと書かれているテーマは以上の4つだけ。
しかもマイブームゆえ方々に書いていた同じようなエッセイを集めたものだから、話しがかぶるかぶる。本書のまえがき「『マイブーム』宣言」によると、なんでも「マイブーム」とは「”自分の中の流行”を世に向けて発信、ともすればマイブームが本当の大ブームに変わっていくように”努力”すること」なのだそうだ。そのため、自分のマイブームを意図して一時期にまとめて発信し、あの雑誌でもこの雑誌でも仏像の話しが載っている、もしかして今仏像がきてんじゃん、といったサブリミナル的(ちょっと違うか)効果を狙っていたのだそうだ。
しかし一冊の本で同じ話題が延々続くとさすがに飽きちゃうぜい。
さらに語り口が昭和軽薄体というか(※例:語り口がしょーわけーはく体とゆーか)、なんかいわゆる「ナウい」感じでちょっと苦笑なところがある。
みうらじゅんの思い入れはよく伝わってくるが、付いていける人にしか付いていけないところがあるかもしれない。そんな一冊となっている。
ちなみに僕は仏像とボブディランの話が好きだった。
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浅田次郎の小説【書評一覧】 > 王妃の館 上/下
一見さんお断り。
いかなるセレブも泊まることは許されない、パリの由緒正しきホテル<王妃の館>。
どういうわけかバブル崩壊後の日本で、そこに泊まるためのツアーが売りにだされていた。
しかも2ツアーも。
片方は参加費150万の超セレブツアー。そしてもう片方は20万と超低価格のツアーだ。
そしてよくよく見てみると、その2口の<王妃の館>ツアーはどうやら同じ旅行会社が企画したものらしい。
セレブ旅を<ポジ>、貧乏旅を<ネガ>と称し、それぞれに7名の参加者を獲得した模様だ。
しかもどうやらこの旅行会社、両ツアーの客を<王妃の館>の同じ部屋に泊まらせようともくろんでいるらしい。いったいどういうつもりなんだろうか。
上司との不倫の末30の半ばに捨てられた元OL、同僚のハレンチさに嫌気がさし「正義」のために辞職した元警官、ベストセラー作家と出版社の女、オカマ、その他9人の旅行客をつれて、<王妃の館>パリの旅は始まる。
上巻は2つのツアー客同士が遭遇してしまわないかというスリリングな展開、登場人物たちの事情や、<王妃の館>にまつわる物語(の話を聞いた作家が書いている劇中小説)が交錯し、大団円に向かう。
登場する多くのキャラクター。それぞれに事情を抱え、ただのお遊びの旅行客がいない。
そんな複雑な一行を、それぞれの事情をきちんと描きながら物語を進展させてゆく。
またそこには浅田節ともいうべき「義理」とか「人情」とかもしっかりからんでくる。
付きまとってくるオカマに義理を通すためにしかたなく一晩抱く正義漢、なんてシーンもあって、もはや笑い泣きの世界だ。
なんだか浅田次郎の十八番のような展開の作品だった。上下巻あっという間に読みきってしまった。
ただ、上巻から貼ってあった伏線が思いのほかあっさり解消してしまうのがなんだか肩透かし感。
まあ面白かったけど。
2015年に映画化。主演はまさかの水谷豊。
http://www.ouhi-movie.jp/
下巻はこちら。上巻が気になるところで終わるので、合わせて手元においておこう。 |
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