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奥田英朗の小説【書評一覧】 > ガール
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5話の働く女を主人公にした短編が収録されたユーモア短編集。
奥田英朗の書く作品には路線がいろいろとあるけど、この短編集はずばり言って『マドンナ』と同系統だ。
『マドンナ』は中年サラリーマンを主人公にした短編集だったけど、この『ガール』はその女版、といった感じ。年齢的に「妙齢」も過ぎちゃったくらいの女たちが、時に男と戦い、時に年齢と戦いながら社会の中に生きている。そんなどこにでもありそうな人たちを主人公にした短編集。今書いていて気づいたけど、もしかすると『マドンナ』とは実際に姉妹本なのかな。
以下2話だけあらすじ。
ガール
表題作。
由紀子は往年のディスコで鳴らしたイケイケギャルだった。
そんな由紀子も今では32。このごろでは、若いころには勝手に転がり込んできた「おいしいこと」がめっきりなくなってきた。そしてそろそろ「ギャルとしての潮時」を感じていた。
しかしそんな由紀子の城壁となっているのは、6年先輩の光山晴美、通称「お光」だった。
38にして現役のギャル。
このお光の揺るがぬギャルっぷりのため、由紀子はまだ自分も大丈夫かなあ…と思っているのだった。
しかし、お光と行動をともにしているうちに、由紀子ははたと周囲のお光を見る目に気づいてしまう。
やはり自分はギャルのままでいてはいけない!
そんな若さと成熟との間で揺れる32歳の働く女の物語。
ひと回り
34歳、入社12年のOL容子は、新入社員の指導社員に選ばれてしまった。
容子が勤める老舗文具会社では、入社10年以上の社員が新人の教育を担当することになっているのだ。
そしてとうとう容子に白羽の矢がたち、同じ営業三課に配属してくる新入社員の教育係を命じられてしまったのだった。
さて、かくして容子が担当することになった新入社員、慎太郎だが、困ったことに大変なイケメンだった。
容子でさえドギマギしてしまうほどのイケメンで、当然周りの若い子たちがほうっておくわけはなく、若手のOLたちがあの手この手で慎太郎に誘惑をしかけてくる。
容子もまたほとんど一目ぼれをしてしまっているのだけど、34でしかも教育係の自分が露骨に好意を示すわけにはいかず、しかしほかの女に取られてしまうのは許せない。
かくして容子は、指導社員の特権を乱用し、あの手この手の女たちから慎太郎を引き離そうとあの手この手を使う。
ある!こういうこと、ある!
そう思わずにいられない、若い男に勝手に翻弄される34歳OLのご乱心。
読みながら、ひゃー!と我がことのように恥ずかしくなること請け合い。
とはいえ考えてみれば、筆者、男。
読者、男。
純度100パーセントの男率なのに、若いイケメンにドギマギするOLの姿を自分に投影して恥ずかしがってんだから、なんなんだろ、これ。
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浅田次郎の小説【書評一覧】 > 薔薇盗人
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浅田次郎の魅力は、『鉄道員』のようなしっとりした純文学が書ける一方で、<プリズンホテル>シリーズや<きんぴか>シリーズのようなユーモア小説を書くこともできるところ。
そんな浅田次郎の魅力がきゅっとつまっている短編集がこの『薔薇盗人』だ。
ひなびた温泉街の場末のストリップ、4畳半に暮らす貧しい母娘と母の恋人。
基本的にこの短編集の色調は、貧しさの中にはぐくまれる情、といういかにも浅田次郎らしいテーマで、しっとりとした優しい雰囲気に包まれている。
しかしそんな中に、ユーモア小説が紛れ込んでいる。
「奈落」と「佳人」の2篇だ。以下あらすじ。
奈落
庶務課課長代理の片桐が死んだ。
片桐は入社当時は東陽物産随一の切れ者として知られる若手だったが、人事の件で上司に反論してからは完全に干され永年雑用係の庶務課暮らし、以来切れ者の影はひそめ、どじ社員として誰からも無視されるようになっていた。
そんな片桐の死に様は、ゴンドラが来ていないのにドアが開いてしまったエレベーターに乗り込みそのまま転落する、というものだった。
どじ社員として馬鹿にされ続けた片桐らしい最期だった。
片桐に身よりはなく、葬儀は東陽物産の庶務課が仕方なくいやいや開いた。
そんなどうでもいい通夜や葬式に参加することになってしまった東陽物産の社員たちの愚痴や噂話によって、この物語はつむがれる。
そしてそんな社員たちの会話から、徐々に片桐の死の意外な真相が明らかとなる…
佳人
身長180センチ、容姿端麗、明朗闊達で語学は堪能、歳は38で独身。
それが新一の部下の吉岡という男だ。
38で独身。
有能であるだけに、このままでは吉岡を海外支社に引き抜かれてしまうことを恐れた新一は、70歳の母を介して吉岡に見合いをさせることを決意する。
しかしこれだけの男がこの歳まで独身であったことから、新一ははたと不安を感じる。
というのも吉岡はホモ、あるいはインポか恋愛トラウマの持ち主かもしれないと思い至ったのだ。
そんな不安を抱えながら、吉岡を自宅に呼び出し、いよいよ新一の母から見合いの話を切り出すことになる。
果たしてこの見合いの結末は…
この2篇については、爆笑小説というよりは、ユーモア小説と呼んだほうがよさそうだ。
大爆笑を誘う作品ではないが、くすりと、あるいはニヤリとしてしまうこと請け合い。
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