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伊坂幸太郎の小説【書評一覧】 > アヒルと鴨のコインロッカー
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作品名: フィッシュストーリー 作家名: 伊坂幸太郎 ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 伊坂幸太郎その他の小説 |
僕はいかにも自分が主人公であるような気分で生きているけど、よく考えてみれば、他人の人生の中では脇役に過ぎない。
【書評・あらすじ】
大学入学のため引っ越してきた18歳の椎名とその隣人の河崎、そしてその2年前に同じ町で暮らしていた琴美とドルジと河崎。物語は<現在>の2人と<2年前>3人を中心に、2つの物語が交互に描かれる。
謎の隣人河崎に言われるがままに、なぜか本屋を襲って広辞苑を強奪することになった椎名。
とはいえ彼の使命は、河崎が本屋を襲撃している間、裏口のドアを蹴って威嚇するだけだった。
しかしただそういう形で広辞苑強奪の手伝いをしただけの彼だったが、どうにも罪悪感がぬぐえないでいた。
そんな彼の身の周りでは、近所に住み着いている猫<シッポサキマルマリ>のシッポにくじがくくりつけられたり、大学で買ったはずのテキストが綺麗さっぱり消失したりといった謎のできごとが次々に起こる。
それもこれも、謎の隣人河崎とであったことが原因のように思える。
かくして椎名は、この謎の隣人の存在に興味を抱き始める。
一方で2年前の物語は琴美の視点で描かれる。
琴美はドルジと一緒に暮らしていた。ドルジは見た目は完全に日本人なのだが、ブータンからの留学生で、二人はカタコトの日本語と流暢な英語を駆使して会話をしていた。
この二人の元にはしばしば河崎という男が現れた。
この男は琴美が過去に数ヶ月だけ付き合っていた男で、その容姿の美しさから女に不自由せず、365日全ての誕生日の女を抱くことを目標にするような男だった。
そんなあるとき、ドルジと琴美は夜道で様子のおかしい若者たちに絡まれる。
ペットショップで働いている琴美は、彼らの会話の端々から、どうもこの若者たちが最近流行っているペット殺しの犯人ではないかと確信する。
椎名と河崎2人の物語、そして琴美、ドルジ、河崎の3人の物語。
本屋襲撃の理由は?ペット殺し事件の結末は?そして両方の物語に登場する河崎の正体とは?
2つの物語は交互に進展し、やがて見事に交錯する。
それにしても意表を尽かれる展開だった。
いや、ストーリーの展開自体もほーっというものではあったけど、それ以上に、視点的人物に騙された。
僕はいかにも自分が主人公であるような気分で生きているけど、よく考えてみれば、他人の人生の中では脇役に過ぎない。
誰が脇役で本当の主人公は誰か。ぜひそれを推理しながら読んでみてほしい作品だ。
そういえば余談だけど、伊坂作品は微妙にリンクしあっていると『ラッシュライフ』のあとがきに書いてあった。そしてなるほどこの作品も他の作品と微妙にリンクしていた。
というのも、『陽気なギャングが地球を回す』や『陽気なギャングの日常と襲撃』の登場人物、響野のワイフの祥子さんの名がこの作品にもしばしば登場するのだ。
どのような形で出てくるかは読んでからのお楽しみ。
伊坂作品はそういう楽しみ方もできるのだね。
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万城目学の小説【書評一覧】 > ホルモー六景
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京都の4大学の間で1000年の間競われてきた、謎の伝統競技<ホルモー>。
秘密裏に行われてきたため人に知られてはいないが、競技者にしか見えない小鬼を操り、合戦をするというのがその競技の趣旨だった。
その記念すべき第500代代表に選ばれた若者たちの珍妙な青春を描いたのが、万城目学の代表作である前作の『鴨川ホルモー』だ。
さて、この短編集は、そんな『鴨川ホルモー』のスピンオフ短編集に当たる。
京都産業大学玄武組の猛者、二人静と呼ばれる定子と彰子の名コンビの馴れ初めから決闘までを描いた「鴨川(小)ホルモー」、京大青竜会ヘルメットヘアーの楠木ふみのバイト先でのできごとを描いた「ローマ風の休日」、立命館白虎隊5ヶ月前に敗北を喫した泣き虫の細川珠美に訪れる<罰>を描いた「長持の恋」など6篇。
いずれも<ホルモー>にちなみながら、どこかほのかに恋模様が描かれており、『鴨川ホルモー』を読んでいなくても普通にラブコメとしても楽しめる。
スピンオフなので、『鴨川ホルモー』の続編としてストーリーが進展するというよりは、『鴨川ホルモー』の登場人物たち、ならびに<ホルモー>にまつわるストーリーが、6篇の短編として描かれている。
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