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ナンシー関のエッセイ【書評一覧】 > 何を根拠に
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ナンシー関ブームが定期的に訪れる。思い出したかのように一冊読んだら立て続けに何冊か読みたくなる。
そしてブームが去るとぱったりよまなくなるんだけど、またそのうち思い出したように読みたくなる。
このごろ毎回ナンシー関のコラムを紹介するたびに「オール6」と評してきたけど、これはつまり、笑える本的「楽」なコラムであることを意味している。
どの本をどのタイミングで手にとっても、一定の笑いという快楽が得られる。そういう安心感を求めて、思い出したかのようにナンシーブームが訪れるのだ。
さて、今回紹介する『何を根拠に』だけど、読んでいる最中、これはいつものナンシー関とは違うな、と感じていた記憶がある。記憶があるといいつつ、読んだのはすごく最近なんだけど、こまったことに中身はほとんどすっかり忘れている。
それで今回は「オール6」ではないなと思っていたはずなんだけど、果たしてそれが、いい意味なのか悪い意味なのか思い出せないでいる。そして確認のため中身を読み返してみるのだけど、わりといつもどおりのナンシー関のコラムでさらに謎は深まるばかり。
そんなわけで採点はとりあえずのオール6としておく。
この本は1990年ごろから92年ごろまでに、『SFアドヴェンチャー』の「でたとこ映画」、『Hot-Dog PRESS』の「メディアジャンキー」として連載していたコラムをまとめたものだそうだ。
「でたとこ映画」に関してはいつものTV評とは違い、映画の評論をしている。
評されている映画は「どついたるねん」とか「押忍!!空手部」など、よくわからない作品が多く、さらにそれらが割りと気に入られていておかしい。一方であの名作マンネリ映画「男はつらいよ」が「寅さんはおもしろくなかった」とばっさり、みもふたもないことが言われていたりする。
そんな映画評の中に無関係に、国技館のロイヤルボックスに忍び込んだという青春エピソード(?)や、28にして女子高生のふりをしてNHKの集金をかわしていた話、岡村靖幸のライブを冷やかしにいったのに不覚にも興奮した話などが入ってきて、ナンシー関の人間らしい(?)横顔が垣間見えるコラムでもあった。
一方の「メディアジャンキー」は、「でっちあげられた評判の嘘をあばく」というテーマで連載されたコラムだったようだ。秋葉原の電気屋が実は安くないことや、山口百恵が伝説化されている理由が実はわからないこと、衛星放送が実は面白くないことなど、「評判」とその実情の温度差を突いているコラムが続く。
話題としては週休二日の導入、ファミレスのファンシーグッズコーナーの謎、など僕が小学生だったころの話が多く、その辺にも胸キュンだった。
そういえば「メディアジャンキー」の中にテレフォンショッピングに対する評が書いてあった。
テレフォンショッピングは男女ペアで行われ、片方が「バカ」を演じるのが常である、といった内容だったかと思う。
さて、ナンシー関がある意味好きだった山田邦子(ナンシーは面白くもないのに売れて勘違いしちゃった人が嫌いで、山田はよく槍玉に挙げらネタにされていた)がいまや深夜のしょうもないテレフォンショッピングで相変わらず自信満々の様子で司会をしている。
ナンシーは生きていたらこんな山田邦子の落ちぶれをどのように評したろうか。
ナンシー関の名言集にいくつか本書から入れたのでチェックしてみるよろし。
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大槻ケンヂのエッセイ【書評一覧】 > 暴いておやりよドルバッキー
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作品名: 暴いておやりよドルバッキー 作家名: 大槻ケンヂ ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆★★★★ ス:☆☆☆☆☆★★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 大槻ケンヂその他のエッセイ |
オーケンが橘高や内田君と邂逅し、【筋肉少女帯】が復活した当時に書かれていたエッセイ。
と、のっけからファン以外についていけない話で恐縮だ。
1行目を翻訳すると、80年代バンドブームにデビューし、以来活動を凍結する1999年までアングラなファンを魅了しつづけた、大槻ケンヂ率いるアングラメタルバンド【筋肉少女帯】が8年ぶりにメンバー仲を快復し、復活するに至った時期に書かれたエッセイ集だ、という内容になる。ふー長かった。
そもそも【筋肉少女帯】(以下筋少)は、90年代末にギターの橘高文彦と大槻がおお揉めに揉めたことがきっかけで活動「凍結」が発表されていた。
本書ではその凍結当時のことや、橘高・内田との再会、復活ライブのことなど、筋少ファンとしてはたまらない内容が語られている。
どうも解散当時、オーケンは「自分さえいれば筋少は成立する」と甘く考えていたようだ。しかし橘高脱退(クビ)をHPで発表し、でもあいつ抜けても余裕でやるよーんと発表後、自らご本人様掲示板に降臨したところ、掲示板は見事に大荒れ。
非難されまくり、もういいねん。やめてやるねん。と心折れたのが解散の経緯だったそうだ。
それ以来橘高と内田(内田にいたっては中学からの友人だったのに!)とは非常に険悪な8年間を送っていたのだけど、8年という冷却期間を経て再び彼らに連絡を取り…。といった復活にいたるまでの話など、普通に人間ドラマとしても楽しい(本書によるとすっきり仲直りというわけでもなさそうだけど)。
そんなわけで、筋少ファンは必見!そうでない人も多分それなりに楽しめる一冊。
ところで、本に関連してこのエッセイ集を語れば、どうも『ロコ!思うままに』が書かれていた時期と同時期に書かれていたようだ。
たとえば本書「『踊るダメ人間』VS『踊る赤ちゃん人間』」では橘高との再会が記されているのだけど、橘高に呼び出されたのがドトールコーヒー。40を超えたおっさんミュージシャンが長きブランクを経て再会し、ファミレス(ドトールだけど)で打ち合わせをする…。
ってこの話、『ロコ!~』収録の短編「神様のチョイスはKISS」でまるっきり同じシチュエーションが出てきたではないか。
また、「夏休みの日記・司会者編の巻」ではKISSのポールスタンレーが某夏フェスで、客席ガラガラの会場をワイヤーに吊られて飛んだ、なんてエピソードが出てくるが、これもまた『ロコ!~』の「神様のチョイス~」に出てくる話だ。
そして何より。ここを見てほしい。僕は『ロコ!~』の書評で、こんなことを書いていた。
一見浮浪者のような見た目。暗がりでもグラサン。ゆったりした関西弁。そして肛門性交やドラッグなどの怪しい話題とそこから引き合いに出されるウィリアム・バロウズ、「ふふふ」笑い。
ついでに大槻ケンヂのリスペクトも合わせて考えるとこの人物、100%確信を持って述べるが、明らかに中島らもだ。
なんなら上に引用した台詞の物言いなど、かなり忠実に中島らもの語りを再現しているといえる。
ついでに大槻ケンヂのリスペクトも合わせて考えるとこの人物、100%確信を持って述べるが、明らかに中島らもだ。
なんなら上に引用した台詞の物言いなど、かなり忠実に中島らもの語りを再現しているといえる。
そして本書の「『ロコ!思うままに』いつか『ロカ』も思うままに?」でオーケンがこんなことを言っている。
「『ロコ!』の終章には、明らかにらもさんだとわかる人物も登場させた」
どうよ!さすがでしょう!だてに長年の中島らもファンじゃないのだ。ばっちり見抜いてやった。
しかし困ったのは、オーケンは上の文にこのように続けるのだ。
「まあらもさんも短編の中で、大槻ケンヂがモデルとわかる人物を登場させている」
あったかしら?とにかく大槻、中島両氏のファンとして、らもさんの描くオーケンも探さないとならないという新たな使命を手にしてしまったのだった。
さて総括。
一時のオーケンのエッセイは、UFOとかプロレスとか推理小説とか、話題がごくごく一部に集中していたきらいがあった。話題が集中するのはいいんだけど、その話題がことごとく一般ウケしておらず、しんどかった感がある。
本書の話題は筋少を復活させた時期でもあったため、関心がバンドに向いていたようで、話題はバンド関係がメインではだった。
ミュージシャンの舞台裏の話はそれ自体面白く、わりとファンでなくてもすんなり楽しめる一冊だったと思う。
そして何より、復活を果たした筋肉少女帯のその裏話がリアルタイムで語られていくというワクワク感。
やはりファンならどっぷり楽しめる内容になっている。
そんなわけで上にも書いたけど、筋少ファンは必見!そうでない人も多分それなりに楽しめる一冊、という評価だった。
ちなみにどうでもいいことだけど、劇団ひとりはオーケンの本の大ファンらしい。
それでこの本の単行本の帯は劇団ひとりが書いたのだそうだ。
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