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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: 走れメロス
作家名: 太宰治
ジャンル: 短編小説集

笑:☆☆☆☆☆★★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆★★★★★
太宰治その他の小説 
【書評・あらすじ】
 角川版『走れメロス』の背表紙で、「走れメロス」は「身命を懸けた友情の美しさを描いて名高い」と評されている。まあこれがこの作品の一般的なイメージだと思う。
 実際、小学校の頃に教科書でこの話を読んだであろう僕も、てっきりそういう話だと思っていた。つまり高潔な人物メロスが、友を救うために走った、という感動的な物語として。

 しかし改めて作品を読み直してみると、あまりにも様相が違うので、ややっと驚いた。
 高潔だと思われていたメロスの実際のキャラクターはこうだったのだ。

1.勝手に城に殴りこんで捕まり、本人に無断で親友を人質として差し出す
2.妹の結婚式に出席した後、急いで城に戻ればいいのに、あせることはないよと一眠り
3.起きたらすぐに走っていけばいいのに、あせることはないよ、とのんびり徒歩で
4.川の氾濫を見て、戻れないじゃん、と嘆く
5.途方に暮れる、泣き言をいう
6.諦める、泣き言をいう
7.言い訳をする、泣き言をいう
8.泣き言をいう
9.泣く
以下略
こんな調子なのだ。The ダメ人間。
 タイトルの「走れ」の部分はてっきり励ますニュアンスの命令形なのかと思っていたけど、どうも正確にはカッコ書きで「(もっとまじめに)」という前置きがある気がする。そしてたぶんこれは気のせいではない。
 つまりタイトルは正確にはこうじゃないか――「(もっとまじめに)走れメロス」
 しかし、僕は教科書で読まされたメロスよりも、このダメ人間メロスが好きだ。とても人間臭い。太宰はメロスを、愛すべき不完全な人間としてきちんと描いていたんだと思った。とてもユーモラスで可笑しい。

 ではなぜ僕はメロスを「高潔」だと、「走れメロス」を単なる感動の物語だと思っていたのか。
 その事情は簡単なことで、教科書に載せる際、教育書として子どもに読ませるにはちょっと、と思われる箇所が「教育的配慮」の名の下に綺麗にカットされているからなのだ。そんなことが許されるはずはないのだけど。
 特にラストシーンは完全に削除されているので、一般的にはあまり知られていないと思う。
 この作品のラストはこのようなものだ。
 暴君までもがメロスの勇気に胸を打たれ無罪放免、やんややんやの大喝采。
 そんなおり、親友セリヌンティウスがメロスにこっそり耳打ちする。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか」

 なんと!
「走れメロス」は、実はこのようなオチがついていた作品だったのだ。
 しかしどうやら教科書からはばっさりカットされてしまっているらしい。

 活字離れが問題視されているらしい昨今だけど、面白い作品がご丁寧にもわざわざ面白くないものに加工され、僕らはそんなのを読まされるのだから、そら誰だって本なんか好きにならんでしょう。

 「走れメロス」は「身命を懸けた友情の美しさ云々」なんてつまらない話じゃあない。
 もっと滑稽でバカらしくて豊かでかっこいい。

追記:
同記事を一生懸命書き直した記事が以下で楽しめます。おススメよ。
http://www.honzuki.jp/book/status/no26618/index.html
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「待つ身が辛いかね」 nobio URL 2011/02/21(Mon)18:53:22 編集
Wikipedia におもしろい背景が書いてあります。

熱海の旅館に行ったきり帰ってこない太宰を心配した太宰妻、様子を見てきてくださいなと檀一雄に往復の旅費と宿賃を渡す。太宰人間失格は檀の来訪を大いに喜び、連日飲み歩く。呑み賃も宿賃も溜まり窮した太宰は、借金を申し込むべく東京の井伏鱒二を訪ねる。この時に、旅館に檀セリヌンティウスを残して行ったのですね。人質として。

数日たっても太宰は戻ってこない。檀は旅館に断って上京。すると太宰は井伏と、あろうことか、のんびり将棋を指していた。激怒するセリヌンティウスに向かって、人間失格はこう言い放ったそうです。「待つ身が辛いかね。待たせる身が辛いかね」

太宰は自虐的に、自分のダメ人間っぷりをメロスに投影してるのですね。
Re:「待つ身が辛いかね」 管理人 2011/02/21 21:58
面白い情報をありがとうございます。太宰最悪すぎる(笑)
でもそういうアイロニーといわれたほうがイメージ的にしっくりきますよね。
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