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町田康のエッセイ【書評一覧】 > 猫にかまけて
町田康の本は10冊ほど読んだけど、どれも個性的過ぎて逆に見分けがつかなくなってしまうのだ。
とにかくただ思い出されるのは、「こら、ケーキを売りやがれ、くそ野郎が、さっさとさらさんと赤の広場でサーカス踊りじゃ、ぼけなすが、はまぐりの半殺しじゃ、なめとったら殺す……苺ショートケーキ」、といった個性的な「町田節」ばかり。
まあその言葉のビートが妙におかしかったりもするのだけど、やはりかなりクセのある著者だと思う。
しかしこの『猫にかまけて』は、町田康にしては珍しく、素直に笑える一冊。
町田康と飼い猫との日々を綴ったエッセイ。町田康は、猫を「匹」と呼ぶことがはばかられ、「うちには猫が3人いまして」と言っては「とうとう言ってしまった」と赤面するほどの猫好きなのだ。
町田家に暮らす猫、ココア、ゲンゾー、ヘッケと、彼らを愛し、翻弄され、足蹴にされ、右往左往する町田康の様子が描かれる。
僕は基本的に猫を擬人化されるだけでもう笑いスイッチが入ってしまうんだけど、このエッセイではそれぞれの猫の個性がほとんど人間猫のように描かれるので、たまらなく可愛らしくて、たまらなくおかしい。少し長いけど一節を引用しよう。以下は町田が服の上でまどろんでいたココアを「あの、それ、よそ行きなんですけど、一応」と強引に退けたときのココアのお言葉。
「人が気持ちよくまどろんでいるというのに、いったいなんてことするの?しかも私は、この床に落ちていた上着をちょうどいいくしゃくしゃな感じにするのにとても苦労したのよ。前肢でひっかいて、その後、一回転して後肢で蹴りつけるなどして。そのうえ私は全身を上着にこすりつけることによって、上着を毛まみれにするまでしたのに。そこまで苦労して構築した私の住環境をいわれなく破壊するなら、私にも考えがある、すなわち、シャム猫特有の太い、しかもヒステリックな泣き声・大声を上げ、あなたの神経を参らせ、仕事をできなくしてやるよ、ほらこういった具合に、きゃあああああああ。きゃあああああああ。きゃあああああああ。きゃあああああああ」笑えて泣ける名エッセイとして、特に猫好きにおススメ。中島らもの『とらちゃん的日常』とあわせて、おススメの猫エッセイだ。なお、現在は続編として『猫のあしあと』も出版されている。
※追記: 知らないうちに文庫化されてました。げげ、ですよ、ほんとね。単行本ってムダに幅取るし。ま、とにかく、文庫化されたならいっそう買いの一冊。 |
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