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浅田次郎の小説【書評一覧】 > 王妃の館 上/下
一見さんお断り。
いかなるセレブも泊まることは許されない、パリの由緒正しきホテル<王妃の館>。
どういうわけかバブル崩壊後の日本で、そこに泊まるためのツアーが売りにだされていた。
しかも2ツアーも。
片方は参加費150万の超セレブツアー。そしてもう片方は20万と超低価格のツアーだ。
そしてよくよく見てみると、その2口の<王妃の館>ツアーはどうやら同じ旅行会社が企画したものらしい。
セレブ旅を<ポジ>、貧乏旅を<ネガ>と称し、それぞれに7名の参加者を獲得した模様だ。
しかもどうやらこの旅行会社、両ツアーの客を<王妃の館>の同じ部屋に泊まらせようともくろんでいるらしい。いったいどういうつもりなんだろうか。
上司との不倫の末30の半ばに捨てられた元OL、同僚のハレンチさに嫌気がさし「正義」のために辞職した元警官、ベストセラー作家と出版社の女、オカマ、その他9人の旅行客をつれて、<王妃の館>パリの旅は始まる。
上巻は2つのツアー客同士が遭遇してしまわないかというスリリングな展開、登場人物たちの事情や、<王妃の館>にまつわる物語(の話を聞いた作家が書いている劇中小説)が交錯し、大団円に向かう。
登場する多くのキャラクター。それぞれに事情を抱え、ただのお遊びの旅行客がいない。
そんな複雑な一行を、それぞれの事情をきちんと描きながら物語を進展させてゆく。
またそこには浅田節ともいうべき「義理」とか「人情」とかもしっかりからんでくる。
付きまとってくるオカマに義理を通すためにしかたなく一晩抱く正義漢、なんてシーンもあって、もはや笑い泣きの世界だ。
なんだか浅田次郎の十八番のような展開の作品だった。上下巻あっという間に読みきってしまった。
ただ、上巻から貼ってあった伏線が思いのほかあっさり解消してしまうのがなんだか肩透かし感。
まあ面白かったけど。
2015年に映画化。主演はまさかの水谷豊。
http://www.ouhi-movie.jp/
下巻はこちら。上巻が気になるところで終わるので、合わせて手元においておこう。 |
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