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劇団ひとりの小説【書評一覧】 > 青天の霹靂
いやー、読売新聞に寸評が載っちゃいました。11年6月26日(日)の朝刊にわがブログ名が載っちゃってます。デーブスペクターの新刊の広告みたいなやつだったんだけど、自慢です。読売購読者の方はぜひくまなく探してみてください。
さて、劇団ひとりの小説第二段、「青天の霹靂」。
「陰日向に咲く」がとてもよかったので、文庫化を待つことなくブックオフで見つけた際に迷わず購入。
主人公は轟晴夫。35歳、金なし夢なし恋人なし。ちっぽけなプライドばかりが高い典型的なだめなやつだ。
場末のマジックバーで売れないマジシャンをしている。
同じバーでかつて一緒に働いていた後輩は今ではテレビで人気者になっていて、そんな後輩の姿を小ばかにしながらも、心のどこかでずっとうらやましくおもっていた。
そんなあるとき、警察から電話がかかってくる。
その用件は、17で家を飛び出してから会っていない父親の訃報の知らせだった。
父子家庭で育った晴夫にとって唯一の家族だったが、飛び出して以来どうしているかも知らなかった。
警察によるとどうやら父はホームレスをしていたらしい。
晴夫は警察から聞き、父が亡くなった場所に行った。
そしてそこで父の本当の思いに気づき、親を捨てたばかりでなく、ろくな人間にさえなれなかった自分の親不孝を激しく後悔する。
そんな折、青天の霹靂が晴夫を打った…
やはり劇団ひとりはダメなやつを描かせると抜群にうまい。
自分は世界の主役で、まさか自分は「普通」になんかならないだろうと信じて生きてきて、今はなんでもないやつかもしれないけれど、いつか一冊の本かなんかと衝撃的な出会いをしてスペシャルな人間になるものだと信じていた。
それがいつの間にか年をとっていて、そんな特別な出会いがあるわけでもなく、「普通」になんかなるもんかと思っていたスペシャルなはずの自分が、「特別」どころか「普通」にさえ遠く及ばないことに気がついている。
そんなやつのくせに、というかそんなやつだからこそ、ちっぽけなプライドが高い。
後輩と好きな女に肉体関係があるのかが気になってしかたないのだけど、どこまで関係が進んでいるのかを尋ねるのにいちいち「鼻毛の処理」をすることで自分なりの「余裕」を演出しなければならない。
そんなダメさゆえに過剰なまでの自意識を抱えた主人公のキャラクター描写が、抜群に可笑しいのだ。
しかし惜しむらくは、物語が進んでいくにつて、そんなダメなやつの魅力がどんどん描かれなくなってゆくところだ。
物語は途中からテーマが<家族愛>みたいな方向に固まってゆく。
それはいいのだけど、その方向に進むにつれて、主人公のダメ人間な魅力が「後悔」の一言で片付けられてしまっているように見える。
それはまるで、映画「ドラえもん」でのび太が急に勇敢になってしまうのを見たときの感じに似ている。
もっとダメなやつのダメっぷりで笑わせてほしかったなと思う。
あくまでも小説を読んで笑いたい男の感想だけど。
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