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浅田次郎の小説【書評一覧】 > 歩兵の本領
自衛隊という謎多き奇妙な組織について、ジャーナリズムではなく、想像でもなく、アイロニーと親愛の念を込めて物語を書くことができる人が、浅田次郎以外にいるだろうか。
いるわけねーだろ。
と唐突な自問自答から始まる今回。笑本!管理人、絶好調で怒涛の日々です。ごきげんよう。
18から20歳といった普通なら呆けて過ごす時期を「三島の死の真相」を求めて自衛隊で過ごした浅田次郎。
そんな自身の経験を元に書かれた作品群がこの『歩兵の本領』だ。
学生たちがピースマークをつけてヒッピーを気取るか、ゲバ棒をかついで学生運動に励んだ時代。しかしなにを気取っても、彼らには高度経済成長のさなか、引く手あまたの就職先があった。
そんな時代に「地連」の口車に乗せられたか、そうせざるを得ない事情を抱えていたかして自衛隊に集まってきた若者たち。
自衛隊という閉ざされたシステムの中で営まれる、人間臭い生活。そこには密な上下関係があって、友情があって、「娑婆」に残してきた人を焦がれる思いがある。
そんな自衛隊の中での若者たちの青春が、浅田次郎自身の経験に基づいて、ユーモラスで感動的に描かれている。
ところで、これらの作品は1997年から2000年にかけて連載されていたようだ。
浅田次郎が書いていた最中は、これらの短編を書き終えた直後、まさか自衛隊が軍隊としての帰路に立たされることになるなんて思ってもみなかっただろうな。
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