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原宏一の小説【書評一覧】 > ムボガ
会社員の扶美夫、工務店を営む卓造、ジーンズショップを営むタコ、役所勤めの信太郎。
4人のオヤジが昔とった杵柄でバンド「コレステローラーズ」を結成する。
以来5年、地味な活動を展開してきたオヤジバンドコレステローラーズであったが、町の祭りで知り合った気のいい黒人ムボガの手によってアフリカのトポフィ共和国で大うけする。そしてライブのためにトポフィにわたった扶美夫たちは、ビートルズばりのスターとして迎え入れられる。
それで勢いづいたコレステローラーズ。日本でのデビューを夢見てそれぞれ職を離れ、国内での音楽活動を真剣に始める決心をする。しかし上京し、いざ活動を始めてみると、思いも寄らなかった壁に直面することとなる。
アフリカのビートルズとしてその名を馳せ、そしてビートルズのように社会問題と虐げられるものたちとの間に立つことになるコレステローラーズ。物語は主人公たちを始め、読者の思いもよらなかった方向に転がってゆくが、それはある意味で、60年代にロックが果たした役割とリンクしている。
これまで読んだ原宏一作品と同様のテーマを見出すとすれば、「社会に対する風刺」ということになるのかな。
自分の家の床下に住んでいた謎の男の話(床下仙人)とか、不気味な善意の押しかけボランティアの話(天下り酒場)とか、原宏一は世にも奇妙な物語的な少し変わった小説を得意としているのかと思っていたけど、この『ムボガ』を読んで、なんだこんなリアリズムに則った普通の物語も書けるんだと感心した。
その意味で楽しみやすい小説だと思う。
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