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浅田次郎のエッセイ【書評一覧】 > 勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛
作品名: 勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛 作家名: 浅田次郎 ジャンル: エッセイ 笑:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 浅田次郎その他のエッセイ |
先日床屋に行く際に、染髪中に読もうと買っておいた一冊。そういうちょっとした暇にはやはり笑えるエッセイが一番だ。
ところで話は早速逸れるが、その床屋で美容師に「誰かに似てるって言われるでしょ」と言われた。まあ誰かといえばサッカー解説の小倉さんには似ているというか、われながらそっくりであきれるほどなので、どうせ小倉さんだろうなと思いつつ「誰ですか?」とほとんど「小倉さんですか?」の口調で尋ねると、「速水もこみち君に似てますね」といわれた。言われてしまった。ははは。
見え透いたお世辞もあったものだが、いくら見え透いていても嬉しいものは嬉しい。実は5年も前からもこみち君を多分に意識して生きている僕だ。苦節5年、ようやく”1みち”入ったわけだ。
閑話休題。とにかく床屋の染髪といったちょっとした暇を埋めるには、軽く笑えるエッセイがもってこいだと思いこの一冊を持っていった。先日、同シリーズの『満点の星』を読んだばかりで、まあ適度に笑ってさくさく読めるかなと思っていたのだ。
が、結果から言うと、暇を埋めるという意味では、この本はちっとも役に立たなかった。
まず、最初に収録された「禽獣について」では、斉藤民子、小笠原チョロ、平岡パンチ、稲田ミルク、という名の飼い猫たちのことが語られている。いっとくが僕は猫ネタに弱い。擬人化されたり、喋ったりされたら、その時点でかなり危ない。
そして引き続き、兄と自分について語った「近親憎悪について」。幼い頃は似ても似つかなかったのに、年を取って久方ぶりに親戚の集いに行ったら、デブ、ハゲ、ヒゲ面、なぜか自分と瓜二つの兄がそこにいて親戚をパニックに陥れたという。
と、この辺りでこの本はお役御免となった。というのも、「斉藤民子」の時点で、あーなんか危ないなーとは思っていたのだけど、そこをして、立て続けに瓜二つの兄弟のくだりなのだ。
すでに必死に笑いをかみ殺しながら読んでいたところを、最後の一押しが加わったものだから、笑いは勢いよく僕の口を吐き、「ポンッ」と正体不明の音を立てて僕は吹き出していた。
そして直ちにこれ以上は危険と判断し、目の前においてあった「鬼嫁VS鬼姑 郵便局員が見た隣の家族の裏の顔」とか書いてある極力つまらなそうな雑誌を手に取ったのだった。
この本は浅田次郎の人気エッセイシリーズ『勇気凛凛ルリの色』の2冊目にあたる。
先日読んだ最終巻の『満点の星』では、人気作家の超多忙な日々を綴った印象があり、話題の中心は、エッセイが書かれた当時の日々が主だった。一方でこの『四十肩と恋愛』が書かれた当時はまだそんなに多忙ではなかったようで、話題の中心は多岐にわたる。
特に浅田次郎の過去(幼少期は富豪の息子、しかし破産して一家離散、親元を離れて暮らし、高校卒業後は自衛隊入隊。そして除隊後はアウトローな期間があり、後に作家に転進)は稀な経歴で、とても面白い。
内容の面白さしかり、笑える具合しかり、染髪中の危険度しかり。かなり好評価の一冊だった。
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