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中島らもの小説【書評一覧】 > 頭の中がカユいんだ
中島らも事実上最初に出版された小説。
実はその前に『すべての聖夜の鎖』という掌編集を出していたのだけど、それは自費出版ゆえに幻の一冊となってしまっている。なおこの幻の掌編集『すべての聖夜の鎖』はユリイカ2008年2月号(←amazonに飛ぶ)に掲載されており、ファンとしては感動的に嬉しい。
しかしユリイカ、すでにプレミアがついたのか、定価の倍の値段になっている。俺は持ってるぜ。ふっふっふ。
閑話休題。
この本には表題作「頭の中がカユいんだ」を始め、「東住吉のぶっこわし屋」「私が一番モテた日」「クェ・ジュ島の夜、聖路加病院の朝」の4つの短編小説が収録されている。
初期の小説ということもあって、中島らもの趣味がモロに出た一冊だと思う。
平たくいえば、シュールレアリスムの色調が色濃く出ている。
特に表題作「頭の中がカユいんだ」がそうだ。
配偶者とのいざこざで家出をすることになった主人公(中島らも自身がモデルか)の過ごした、わずか4日間のできごとが描かれている。
とはいえその4日間で何かが起きるということはなく、むしろ話は例えば村八分の山口富士夫を見た日のこと、例えば公告屋についての論議、昔の女から届いた手紙、そして人を笑わせないためのコントの作り方、など縦横無尽に転がり続ける。
また途中、コントやお蔵入りになったCMのネタなどがはさまれ、物語は暴力的に枠を崩されている。
しかしこれだけめちゃくちゃやっといて、それでいて物語としてなぜか面白いのだからすごいのだ。
特に注目したいのはラリりのシーンで、晩年の『バンド・オブ・ザ・ナイト』で見せる例のイメージの連鎖がすでに用いてあったりする。自動筆記は、中島らもの中ではかなり息の長い手法だったのだ。
最後になんとなく印象でまとめてしまうと、この本はロックと笑いが通底するのだと分からせてくれる一冊だと思う。
破壊的ユーモア、と評しておく。
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