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栗田有起の小説【書評一覧】 > ハミザベス
当ブログでは直球勝負のギャグ小説からゆるーいユーモア小説まで、さまざまなタイプの笑える小説を紹介してきたつもりだ。が、今回紹介する栗田有起の「ハミザベス」は、なんというか、読んだことのないタイプの笑える小説だった。「笑える」具合が他に類をみない感じなのだ。
どう新しいか、というのは、僕が読んでいたときの心境を書くと分かりやすいだろう。例えばこんな感じ。
「ぶっ。ははは、手タレ、手タレ、はははは、手タレだってよ、ははは・・・。あれ、これってギャグ・・・だったのよね?」
たぶんギャグだったはずなのだ。そして全体としても、物語の随所にギャグがちりばめられていたはずなのだ。しかし、あまりにもそのギャグが物語に溶け込みすぎているため、笑ったあとに、はて今のは笑ってよかったのかしら、と不安になってしまう。
ユーモアにまったく気張りがなく、これっぽっちも「どや顔」をしない。それは「ゆるい」とも「クール」とも違う奇妙なユーモアのあり方だった。
そもそも物語りの設定がおかしい。
「死んだと思っていた父が本当に死んで、突然遺産を相続することになった主人公」
よく考えたらぜんぜんわけがわからない。「死んだと思っていた父が本当に死ぬ」ってなんじゃそりゃ。
そしてその後主人公は遺産としてマンションとハミザベスという名のハムスターを相続するのだが、そのストーリーの核心的部分がこりゃまたまったくとんでもない設定になっている。
そこが一番面白いところなので何なのかはここでは書かないが、直球勝負のギャグ小説でもここまでめちゃくちゃな設定は少ないぜ、ほんと。
しかし、それを読者が自信を持って笑えないほどに、そのめちゃくちゃさが物語に溶け込んでいるのだ。
読者に笑ってよいのか迷わせるという、斬新な笑える一冊。面白い。
追記:
合わせて収録された「豆姉妹」がまた面白い。こっちもとぼけているが、「ハミザベス」よりも笑える度がぐっと高い。おススメ。
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