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野坂昭如の小説【書評一覧】 > エロ事師たち
中島らもが方々で賞賛していたので、以前から気になっていた小説だった。
それでずいぶん前に買ってはいたのだが、文体がかなり独特なのでなかなか物語に没頭できずに今まで脇においておいたのだ。
しかし昨晩腹を決めて読み始めると、今度は手放すことができずあっという間に読みきってしまった。
主人公が仲間を得て何か一つの目標を目指す、といった作品群が一定量ある。
たとえば、といってマンガしか思い浮かばないのが情けないが、たとえば「スラムダンク」「H2」「ワンピース」など。
目標はインターハイ、甲子園、海賊王の称号、それぞれあるだろうけど、とにかく主人公がそこを目指すに当たり、セカンドなりポイントガードなり船医なりといった頼れる仲間たちが集まってきて主人公に力を添える。
そういった筋に僕はめっぽう弱くて、すぐその気になって「よし、今年こそ甲子園を目指そう」と思い立ったりするのだ。
この『エロ事師たち』も平たくいえば、まあ、そういう話だったのかもしれない。
主人公スブやんのもとに、各分野の仲間達が集まってきてより高みを目指す。
ただその目的というのが、なんだ、その、まああれだ、ちょっと…「エロ」ということなだけなのだ。
エロを生業とするスブやんと伴的、そして彼らのもとに集まってくる者たち、去ってゆく者たち。
「エロを問うことは生き方を問うことだ」
とは今僕が勝手に思いつきで書いた言葉だが、でたらめに思いついたなりに、案外物語の核心をついている。
女を痴漢しているつもりが間違えてスブやんの尻を揉んでいる会社の重役、服上死ならぬオナニー死を果たす男、アブノーマルなことでしか立たなくなったものたち、など。
彼らを取り巻く人間模様は可笑しくも悲しく、そしてエロい。
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