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作品名: 僕にはわからない
作家名: 中島らも
ジャンル: エッセイ

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆☆☆★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
中島らものその他のエッセイ 
【書評・あらすじ】
 エッセイスト中島らもはさまざまな顔をもっている。
 基本的にはバカ話の好きなおじさん。そしてときとしてロマンチスト、ときとしてキザでもある。
 これらは絶妙なバランスで共存し、中島らものエッセイを中島らものエッセイたらしめている。

 しかしなにより中島らもの大きな特徴は、日本屈指の進学校、灘中学に上から9番の成績で入学したというその頭のキレのよさにあると思う。
 これは勉強ができる云々ということではない。実際中島らもは高校に進学後「落ちこぼれ」たというが、そんなことはどうでもいいのだ。
 博識で、難しい事柄や抽象概念を明快に理解し、そしてそれらの知識をきちんと整理して提示する能力がある。
 そういう「頭のよさ」こそ中島らもの特徴の一つなのだ。
 しばしば「ペダンティック」と批判されることもあるようだが、しかしそれこそが中島らもの大きな魅力だと思う。

 さて、この『僕にはわからない』だが、そのタイトルとは裏腹に、中島らもの「ペダンティック」な部分が堪能できる。
 というのも、「わからない」話しがテーマになっているものだから、内容がやや難しめなのだ。
 例えば「死」について、「知」について、「真理」について、など。
 これらはジョルジュ・バタイユの「連続と不連続」という概念や、ユングの「集合的無意識」といった言葉が用いられながら語られている。
 本当にこの博識さにはただただ舌を巻くばかり。

 そのほか、「ケニアの呪術師」が興味深かった。
 ケニアに『ガダラの豚』のための取材にいった際の様子が描かれている。
 現地では実際に呪術師と会うことができたらしいのだけど、帰国後しばらくするとその呪術師からスワヒリ語で書かれた長文のエアメールが届いたという。
 呪術師から長文のエアメール…ただならぬ予感を感じさせるではないか。
 さてさてその手紙の気になる内容は。

 ところでこの記事を書いてみて気づいたのだけど、この一冊は弱冠ファン向けな内容だったかもしれない。
 僕は好きだから楽しく読めたけど、かなり難しめの内容なので、導入がこれだったら抵抗があったかも分からん。
 そして中島らもの面白さをを知らずに「け、ペダンティックなクソ豚野郎」などと評価を下されるのはあまりにも悔しい。
 そんなわけで、中島らもが気になる人は、先に『中島らものたまらん人々』や『明るい悩み相談室』などを読んで、まず中島らもを好きになってから挑戦してみてほしい。

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