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森見登美彦の小説【書評一覧】 > 太陽の塔
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。
【書評・あらすじ】
「みんなが不幸になれば、僕は相対的に幸せになる」
名言だ。
大学時代、TOEIC受けたり、留学したりと、「積極的」を絵に描いたように活動する人たちが大勢いる。また、さにあらずとも、要領よく単位をとって、また上手いこと波に乗って就活を始め、なんだかんだで4年で無事に次の進路に進む人たちも大勢いる。僕はそういう人たちを総じて「わたし、大学生やってるーん一族」と呼んでいた。
しかし中には、そんな大勢を呆けた顔で眺め、気がつけば大学に6年もいるような人だっている。
彼らはどうしようもなく悩み、迷っている。しかしそうしたところでどうしようもないから、とにかく一心に妄想に励んだりするのだ。
この小説は、そんな後者の話。
かつて恋人関係にあった水尾さんを、「断ち切れない恋心とは無縁」で「あくまで冷静に紳士的」に「研究」している主人公「私」。「断続的に行われる彼女とのメールのやりとり、および大学内外における実地調査」を通して彼女の日々の行動を「観察」した結果、その成果は「四百字詰め原稿用紙に換算して二百四十枚の大論文」になっている。
傍からみればストーカーにしかみえないそれは、「私」によって「水尾さん研究」と称されている。
しかしそんな「水尾さん研究」に励んでいるあるとき、「私」は遠藤なる男に、「これ以上、彼女につきまとったら警察を呼ぶ」と脅される。展開からしてこの遠藤は水尾さんの新しい恋人とみるのが妥当だろう。しかし実はこの男、「私」とはまた別の水尾さんのストーカーなのだ。
そして後日、「私」に依頼されこの遠藤を見張っていた友人飾磨から報告がある。
なんでも、あるとき「私」がビデオ屋で「美しき女人の新作チェック」をしていた際、遠藤はそのあとをつけており、その尾行は「私」が自宅に帰るまで続いたのだというのだ。
ということはこの遠藤というストーカーは「水尾さん研究」のためにストーキング行為を行う「私」を尾行していたわけだが、さらにその遠藤を飾磨がつけていたことになる。
ストーカーを尾行する男を尾行する飾磨。
書いていてなんだかよくわからなくなってきた。
ゆくあてのない若き力を、世間一般の皆様にとってまったく何の役にもたたないものに注ぎ込んだがために、わけのわからない次元に到達してしまった、そんな若者たちの非青春的青春小説。
大学時代というモラトリアムをこれほど忠実に描いた作品を僕は他に知らない。
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