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みうらじゅんの小説【書評一覧】 > 色即ぜねれいしょん
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作品名: 色即ぜねれいしょん 作家名: みうらじゅん ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆★★★★ ス:☆☆☆☆☆☆★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ みうらじゅんのその他のエッセイ |
セックスはゴムを着け、ドラッグは当然禁止され、後に残ったロックンロールだけが頼り。
【書評・あらすじ】
今回から「ちら見せ名文句」と題し、各書評記事にその作品を象徴する一文、一番笑った一文、印象に残った一文を紹介することにしました。
さて、書評。
自身の経験を元に書かれたThe青春小説。
仏教系の中高一貫校に通う主人公のイヌこと乾純は、ヤンキーに目をつけられない程度のランク付けの「文科系」高校生。この「文科系」とは、おそらく僕のころに「オタッキー」と呼ばれていた類の中高生と同じものだと思われる。
彼女はなく当然童貞で、はじめたばかりの「通信空手」も15日でやめてしまった。
やることといえばアコギ片手にオリジナルソングを作ることだけ(ちなみにみうらじゅんは高校時代、自らに勝手に「締め切り」を課して、毎日作曲に明け暮れていたという)。
それでいっちょうロックっぽくグレみるか、と思えども、両親は理解があり、生活に不満はなく、しかも母親が息子の歌の大ファンとあっては、グレる理由が見つからない。
思春期のイヌのコンプレックスは「幸せすぎるところ」だった。
そんな折、クラスメートの伊部と池山から隠岐島のユースホステルに行く話しをもちかけられる。
なんでもユースホステルとは、フリーセックスを信望とする若者たちが集う場所で、毎夜すんごいセックスパーティが繰り広げられているというのだ。
かくしてイヌは、「幸せな生活」というコンプレックスから逃れるべく、セックスの楽園隠岐島のユースホステルへと渡る。
しかしもっとも、当然のごとくにユースホステルにフリーセックスなどあるはずもなく、その代わりに3人につけられたあだ名が「フリーセックス」だった。
しかしマドンナのオリーブやヒゲゴジラをはじめ、隠岐島で出会った人々との出会いと別れを経て、彼らは大人への階段を一段だけ上ることになる。
ざっくりかけばこのような感じのThe青春小説。
時代設定は70年代後半といったところか。
ヤンキーがまだ「体育会系」で、パンチパーマかリーゼントがかっこいいとされた時代。
舞台となるユースホステルとて、僕が幼いころ(現在31歳)にはとうにすたれていたけど、かつてはこのような<青春の場所>だったのだねえ。
さて、あとがきによると、この作品はみうらじゅんが実際に体験した隠岐島での思い出を元にかかれたものらしい。
僕はこの本を大槻ケンヂ的な作品として読み始めたんだけど、というか、童貞で高校生でバカ、というテーマ自体極めてオーケン的な作品といって間違いないんだけど、とにかく読後に感じたこととしては、みうらじゅんはなんだかんだでちゃんとした青春を送ったんだなあということ。
もっともいくら実体験を元にとはいえ、フィクションを比較して作家の青春時代をどうこういうのも無理のある話しではあるけど。
ただ、確かに童貞で男子校で文科系で、間違って好きな子にラブレター出して迷惑がられたりはするんだけど、いっしょにバカをやってくれる仲間がいたという点で、主人公イヌは恵まれている。
少なくとも、誰とも口を聞いていないことを周囲に悟られないために、休み時間の間中水のみ場で水を飲んでいるふりをして過ごす、みたいな悲惨を絵に描いたような青春ではないわけだ。
ちなみにこの「休み時間水のみ場事件」は大槻ケンヂがエッセイか何かで書いていた実話なんだけど(ちなみに爆笑問題の太田も同じ話をしていた)、そんな青春時代を過ごしてしまったら、どう間違ってもこの『色即ぜねれいしょん』みたいな軽妙な物語は書けないと思う。
その理由から、なんだかんだでみうらじゅんは充実した青春を送った人なんだと判断したわけだ。
エッセイは以前から好きで読んでたけど、小説もなかなかよかった。
みうらじゅんのマルチタレントっぷりが冴える一冊。いったいこの人は何者なんだろうか。
おススメ記事:みうらじゅんの名言集
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