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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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笑える本を読もう! > 伊坂幸太郎の小説【書評一覧】 > 陽気なギャングが地球を回す

作品名: 陽気なギャングが地球を回す
作家名: 伊坂幸太郎
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆☆☆☆☆★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
伊坂幸太郎その他の小説
【名言・名文・名セリフ】
「本に書いてあることはたいてい、でたらめだ。目次と定価以外全部嘘だ」

【書評・あらすじ】
 冷静沈着、常に事態を冷静に分析し、あらゆる嘘を見抜く観察眼を持つ男、成瀬。スリの天才にして人間よりも動物を愛する若者、久遠。演説の達人にして口から生まれてきたような男、響野。絶対時間感覚を持つ女、雪子。
 これらの能力者たちはこれまでお互いの能力を結集し、緻密な計算をした上で、誰も死なない殺さない、被害者に恐怖心さえ残さない、そして自分も逮捕もされない、そんな無害な銀行強盗を行ってきた。
 しかし今回の強盗は別だった。
 なんと強盗した直後に、その金を「現金輸送車ジャック」に奪われてしまったのだ。
 特殊な能力を持った主人公たち4人が、現金輸送車ジャックとその謎に挑む。相手の手の裏をかく頭脳合戦が面白い。

 成瀬、響野、久遠、雪子。物語の視点は主人公4人の間でころころと代わり、気になるところで別の視点に移り変わるのでずいずいと読まされてしまう。
 ストーリー展開のテンポがよく、また主人公たちと彼らに関わる脇役達のキャラクターが魅力的。
 伊坂幸太郎はこれまで何冊か読んだが、軽快なセリフ回しに反し、ストーリーがシリアスなものが多かった。
 そのてんこの「陽気なギャング~」は軽快な会話に加え、物語自体もユーモラス。
 ようやく胸を張って笑える本として紹介できるってもんです。

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作品名: グラスホッパー
作家名: 伊坂幸太郎
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆★★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆☆★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
伊坂幸太郎その他の小説
【書評・あらすじ】
 元教師の主人公鈴木は、殺された妻の復讐を果たすべく、非合法の薬物を売る会社《令嬢》で働いている。
 というのもその会社の社長、寺原の息子が妻の敵だったのだ。
 そのため鈴木は《令嬢》内部に潜入し、寺原の息子に復讐を果たすタイミングをうかがっていた。
 しかしそんなあるとき、鈴木の目の前で寺原の息子は車に轢かれて死んでしまう。
 どうもその背後には、人の背中を押してその人物を消すという、業界の中でも都市伝説とされる「押し屋」が関わっていたらしい。
 その「押し屋」をめぐり、物語は動きはじめる。

 さも当たり前のように存在する非・合法な世界。
 一般人にドラッグを売る会社、人を消すための会社、そしてそれらを補助する下請け会社。
 そんな裏社会を舞台に、物語は「鈴木」「蝉」「鯨」3人の視点を交互に入れ替えながら描かれていく。

 裏社会を舞台にいているだけあって、出てくる奴らがとにかく全員悪人。
 とはいえそれは浅田次郎の「きんぴか」に代表されるような、いわゆる悪漢小説(ピカレスク)とは違う。ピカレスクの魅力はいわゆるヤクザものの「義理」とか「人情」といった美徳の上に成り立つものだと思う。
 しかしこの『グラスホッパー』に描かれる裏社会は、言い方に語弊があるかもしれないけど、もっと「都会派」のソフィスティケートされた裏社会なのだ。
 つまり義理や人情が一切介入しない、冷徹な悪人たちしか登場しないのがこの小説なのだ。

 語り手の一人「蝉」はナイフにより人を殺し、「鯨」は催眠術の要領でターゲットを自殺に追い込む。どちらも名うての殺し屋だ。
 彼らの殺人の目的はあくまでも「仕事」であり、情によって左右されることはない。
 また、殺人以外を遂行する「劇団」や「拷問屋」たちも、すべて「仕事」の上に成り立っている。
 このように、「悪人」たちの人の人をあやめるための理由が「仕事」というところに、ひやりとした温度のない怖さがある。
 そんな中で、主人公鈴木は恐らくもっとも読者に近い感覚を持った人物と意図されて描かれている。
 もっとも彼もまた罪もない人たちに非合法な薬を売るのを生業とする「悪人」ではあるのだが、彼の悪事には「妻の復讐を果たすため」という大義名分が与えられている。
 おそらくこの1つの動機付けが、この小説に登場する人物の中で唯一読者が共感しうる真っ当さとなっている。
 それは逆にいうと、他の登場人物の殺人動機には共感できる部分が1つもないということにもなるんだけど。

 ストーリーはシリアスだけど、セリフ回しがいちいちユーモラスで可笑しい。
 そのユーモアが、不条理なほどに人が殺されるこの小説の辛さを和らげている気がした。
 いやむしろセリフだけを辿るとかなり笑える部分もあったと思うのだけど、物語の緊張感がそれを感じさせないほどすごかったのかもしれない。
 ユーモアと緊張のせめぎあい。
 あとどうでもいいけど、登場人物がたびたび引用する「ジャック・クリスピン」なる人物の引退の一言がよかった。

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