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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: チルドレン
作家名: 伊坂幸太郎
ジャンル: 短編集

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆☆★★
ス:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
伊坂幸太郎その他の小説
【名言・みどころ】
「閉店時間が何だって言うんだよ。時間よりも客のほうが大事だろ。タイム・イズ・マネーと言うじゃないか。時間は金ってことは、金を預かるのが銀行なんだから、ここには時間だってあるんじゃないか。そうだろ?」

【書評・あらすじ】
 思ったことをすべて口にし、思うが儘に行動する自由人、陣内。そしてそんな彼と大学入学以来腐れ縁の鴨井。冷静沈着な盲目の青年永瀬。『チルドレン』はそんな彼らを中心に据えた連作短編集だ。
 銀行強盗や女子高生の援助交際(?)、少年の非行など、作品内でそれなりの事件は起きるのだが、物語は劇的というよりは、むしろのんびりと進む。それでいて中心人物の陣内のキャラクターがとにかく痛快で、読んでいてまったく飽きなかった。
 中でも好きだったのが、第3話の「レトリーバー」に描かれた、盲目の永瀬が募金をしているわけでもないのに「善意」のおばさんから「施し」を受けた場面だ。通りすがりのご婦人が「何も言わずに、これ使って」と5千円を永瀬の手に握らせるのだが、その様子をはたから見ていた恋人の優子は「憤慨すべきなのか、悲しがるべきなのか、感謝すべきなのか」と悶々とした気分になる。 この感覚はよくわかる。押しつけの善意は時として悪意よりもたちが悪いものだ。
 しかしその場に陣内が現れた際、この不快感は一遍する。陣内は永瀬が見知らぬおばさんから5千円をつかまされたと知ったとき「ふざけんなよ」と憤慨する。しかしこの憤りは善意を押し付けてきたおばさんに対するものではない。ましてや盲目の永瀬の心中を察しフォローしようとしているわけでもない。
「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」
 陣内は単純に、永瀬だけが5千円をもらえ、自分は何ももらえないことに腹を立てているのだ。
「自分だけ金を手に入れたからって、いい気になるなよ」
 陣内は永瀬を気遣うどころか、むしろ彼に憤慨しながら、その施しをした婦人を懸命に探そうとしたりする。
 その時の陣内の様子を、永瀬は次のように回想する。
「あの時の陣内は、本当に、普通だったなあ」 
 わけもなく5千円をもらえたことを「普通」にうらやましがる。そんな陣内のやることは一見めちゃくちゃなのだが、それは永瀬にとって一番優しいことだったりする。
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作品名: フィッシュストーリー
作家名: 伊坂幸太郎
ジャンル: 短編集

笑:☆☆☆☆☆★★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆☆☆★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
伊坂幸太郎その他の小説
【書評・あらすじ】
 年末(2012)の深夜に何気なく放送されていた映画を何気なく見ていたら、その映画がえらく面白かった。
 巨大隕石が迫るという典型的終末のさなか、一人の天才数学者によって世界が救われるなんていう内容で、セックスピストルズよりも前にパンクにたどり着いてしまったがためにまったく売れなかったバンドの曲が、いくつかの時代の人々の物語をつなぎ、終末の現在にいたるという構成だった。
 非常に世界観もよく、1キャラクターを演じた多部未華子もとてもかわいらしかった。
 そして気になって映画の詳細を調べてみると、原作が伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」という短編小説だとわかったわけだ。

 しかし映画がけっこう壮大に作られていたのに対し、原作は短編。当然中身のボリュームが違う。
 映画のほうで好きだった話が実は原作にはなかったりしてちょっとがっかりなのが今の心境だ。というか映画があまりにもよくできていたのかもしれない。多部ちゃんがかわいかったし。
 映画にしかなかったシーンなども非常によく伊坂作品のあの世界観を再現できていたと思うし。多部ちゃんもかわいかったし。
 てなわけで、よく小説の映像化は酷評されるけど、この「フィッシュストーリー」については映画のほうが面白い。

 さて、この短編集には4つの「フィッシュストーリー」(意味:ほら話)が収録されているんだけど、笑える本的にいうと、最後に収められている「ポテチ」がよかった。
 都会的(つまり伊坂的)ドロボウの今村と、1年前に自殺しようとしているところを留められて以来今村と同棲している大西の話で、その出会い(つまり自殺未遂)の際の2人のやりとりがいかにも伊坂的なユーモアに満ちている。
 以下中略しながらそのやりとりを一部抜粋。
「俺の親分が、このマンションの下で待ち構えているんだ……君が落ちたら、キャッチするんだよ、残念だけど」
「キャッチ?十階から落ちた人間を?……落ちたわたしを、その普通の中年男がキャッチするつもりなの?……無事なわけないじゃん」
「大丈夫」
「何で、わたしが最期の最期に、見も知らない中年男にぶつかって死なないといけないわけ?ぶっとばすよ」
「親分は高校球児だったんだって。しかもポジション、外野だし」
「だから何?」
「フライを捕るのは得意中の得意なんだって。小さいボールを捕るのに比べたら、君を捕るなんてね、余裕だよ余裕。余裕過ぎるよ」
「それとこれとはぜんぜん、違う」
「たいがい補欠だったらしいけど」
「補欠なのかよ!」
 
こんな感じの笑えるセリフが、わりとシリアスな物語の中で交わされるのが伊坂ユーモアの特徴かな。

 映画「フィッシュストーリー」もおススメ!多部未華子ちゃんがかわいいぞ!
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