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景山民夫の小説【書評一覧】 > 東京ナイトクラブ
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ユーモアからホラーまで、幅広いジャンルの短編がきゅっと12話収められた短編集。
このブログではユーモア部分にだけ言及していくことにするが、おススメ作品は「サイケデリック航空」「地球防衛軍」「ネンゴロニンゴロ旅行案内」あたりだった。
サイケデリック航空
新婚旅行で空港へきたはいいが、脱いできたジャケットの中にチケットを忘れてきたことが判明した。
盛大にみなから見送られた手前、おずおずとチケットを取りに帰ることはできない。かといってサイパンまでのチケットを新たに入手する余裕があるはずもない。途方にくれつつ、空港のカウンターで夫婦揃って無茶な駄々をこねていたところ、その様子をはたから見ていた怪しげなおっさんが妙な話を持ちかけてくる。
「サイパン往復、たったの三万八千円。ホテル代は別ですよ……うちは小さな旅行会社だからね。IATAの協定料金よりずっと安く飛ぶの。但しちょっと飛行時間かかるよ」
そんな口車に乗せられてチケットを買ったはいいが、飛行機はおんぼろ、おまけにシートベルトがガムテープだったり機内食がカップ麺だったりと何か様子がおかしい。
本当に飛べるのかも怪しい中、ついに飛行機は離陸するのだが、じきにおっさんのセリフ「ちょっと飛行時間がかかるよ」の意味が明らかとなる。
ユーモアの路線は「シュール」。系統としては三崎亜記の「二階扉をつけてください」を思わせるものがあり、かなり好きな話だった。
地球防衛軍
怪獣が現れなくなり久しい地球。
怪獣対策のため組織された地球防衛軍はいまでは暇な主婦のゴキブリ退治につき合わされている。
そんな折、とうとう久しぶりに怪獣が出現したとの通報がとどく。
暇と苦汁を舐め続けた地球防衛軍としては、待ち望んだ怪獣の出現だ。
皆いそいそと出動してゆく。
しかしその先には怪獣とは別の思わぬ敵が待ち受けていた。
ユーモアの路線は「ドタバタ」。筒井康隆のドタバタユーモアに影響されたと思われる作品だった。
ネンゴロニンゴロ旅行案内
ネンゴロニンゴロ共和国の旅行者のためのガイドブック。
ネンゴロニンゴロは近くまで未開の国だったが、資源が豊かであることが判明してから世界に知られる国になったようだ。
ガイドブックを模倣したという意味で、ユーモアの路線は「パスティーシュ」。いうまでもなく、清水義範の影響を強く感じる、というか清水義範自体をパスティーシュしたような作品だった。
その他、ウィットに富んだ景山民夫らしいユーモア作品「ポルカパーティー」、時そばを現代風にリメイクした新作落語「年そば」、SFユーモア「お役にたてれば」など、笑える本としておススメできる短編が多く掲載された1冊だった。
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景山民夫の小説【書評一覧】 > トラブル・バスター3 国境の南
どうもご無沙汰。
ってほどでもないけど、4月より住所も仕事も大きくかわって、なかなかてんやわんやのフレッシュマンしてますよ。29歳でフレッシュマンってのもあれだけど、まあそれが当たり前の業界なのだ。そんなわけであわただしくも楽しい日々を送っています。イエイ。
さて、『トラブル・バスター3 国境の南』について。
景山民夫のトラブルバスターシリーズ第3作。
前2作は連作短編小説だったので、てっきりこの1冊もそうなのだと思って読んでいたけど、意外なことにガッツリ1話の長編収録だった。
シリーズですっかりおなじみトラブルバスターの宇賀神邦彦のもとに、こらまたすっかりおなじみ田所局長の「バカヤロー!」の一声と合わせてテレビ局内のトラブルが持ち込まれる。
メキシコロケの帰り、カメラマンの伊藤知広がVTRを持ったまま失踪してしまった。このままでは関東テレビの長寿番組「月曜トップ」に穴を開けてしまうのでなんとかしろ、というのが局長の命令で、なんとかならないと「関東テレビリゾート開発北軽井沢案内所の管理人に飛ばすぞ、わかったか、バカヤロー!」とのことだった。
まあここまではいつもの調子。
しかしこの作品を長編小説たらしめた問題は、そのカメラマンのパスポートを持った礫死体が発見されたことなのだ。人の死がからんでいる以上、手短に済ますわけにはいかないものね。
ところでこの事件の調査の折、宇賀神はカメラマン伊藤の娘瞳とチームを組み、協力しあって真相を究明することになる。この瞳がもう絵に描いたようなヒロイン。容姿端麗、聡明で何事にも物怖じしない。ハードボイルドに若くて賢くて可愛いヒロイン。これはますますもってジブリの『紅の豚』じゃないか。
おなじみのハードボイルドにヒロインの要素も加わって、いよいよ盛り上がってきた同シリーズなのであった。
ところでこのヒロイン伊藤瞳、時代の違いというのが露骨にでてしまっていて惜しい。
というのも、瞳のイメージが「ゴクミに似ている」と描写されているからなのだ。今となってはゴクミの女子高生を想像するのは極めて難しい。というか下手をするとゴクミを知らない読者も多い気がする。
そこでこのあたりは読者のコチラがうまいこと頭の中で好みのアイドルかなにかにイメージを変換しないといけないらしい。で僕は誰をイメージして読んだかというと、これはもうダントツで志田未来ちゃんだ。がんばれ未来ちゃん!おじさん応援しているぞ!
そんなわけで、長編だったので意表をつかれたけど、相変わらず本編から初刊本あとがきにいたるまで、隅々までハードボイルドな1冊だった。
同シリーズの『トラブルバスター』と『俺とボビー・マギー』を合わせてどうぞ。
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