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森見登美彦の小説【書評一覧】 > 新釈 走れメロス 他四篇
作品名: 新釈 走れメロス 他四篇 作家名: 森見登見彦 ジャンル: 短編小説集 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆★★★★ 危:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 森見登見彦この他の小説 |
ずいぶん前から気になってたこの短編集。
先日、ブックオフで単行本が750円で売られているのを発見し、その棚の前で買おうかどうかこ一時間苦悶したところだった。
こ一時間とは、店員から「あの人、そろそろ盗るよ」といった鋭い視線を投げかけられるに十分な時間だ。僕はその猛烈な視線に耐えながら、かつ己との葛藤に苦しまねばならなかった。
古本屋めぐりも楽ではないのだ。精神的に。
しかし困ったことに、僕はよほどのことがない限り500円以上の単行本は買わないようにしている。
なんとなれば、単行本は高いうえにやたらと場所を取るからで、僕の中ではブックオフ100円コーナーの文庫本が理想とされている。
そのような事情で、結局その単行本は泣く泣く買わずにスルーすることにしたのだった。
ところがそんな次の日、僕は本屋の文庫コーナーの前で震えていた。
どうも最近文庫化されたらしい、文庫版『新釈 走れメロス』が、「最近入りましたー、ショコラでーす」みたいな顔をして鎮座していたのだ。
こんなタイミングのいいことってあるのだ。
ああ、ショコラちゃん。
本の中身は、5篇の短編が収録された短編集。
「山月記」「藪の中」といった名の知れた古典作品を土台として書かれている。
笑える本としてのおススメは、表題作「走れメロス」。
人質(として差し出したためにそういうこと)になった親友との約束を果た(さないでやりすご)すために、全力で走(って逃げ)る男、芽野。
「俺の親友が、そう簡単に約束を守ると思うなよ」
なんて、完膚なきまでにバカバカしくて、無駄にかっこいい。
ところでこの話しにでてくる「自転車にこやか整理軍」や「図書館警察」って、たしか『四畳半神話大系』にもでてきてた気がする。
森見登見彦の本ってこういう細かいところでリンクしてたりもするのね。
以前僕は、本家太宰の『走れメロス』を思い切って「笑える話」として紹介してしまった。
なんとなれば、一般に思われている本家メロスの印象(勇敢な英雄の物語)どおりであるには、あの話しはあまりにも変すぎると思うのだ。
ところが、この『新釈~』を読んで、森見登見彦ももしかしたら僕と同じ印象を持ってるんじゃないかと思った。
例えばこんな一節をみるとそう思う。
「芽野は気まぐれに正義漢である」
本家メロスもこの言葉で説明できてしまうのだ。
もちろん真偽のほどは知る由もないが、こういうふうなことを書いておけば、とりあえずみなさんから「そうなんだ」と信じてもらえそうな気がするんだな。
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森見登美彦の小説【書評一覧】 > 四畳半神話大系
「腰の座っていない秀才よりも、腰の座っている阿呆のほうが、結局は人生を有意義に過ごすものだよ」
【書評・あらすじ】
むかし『もしも』というドラマシリーズがあった。
『世にも奇妙な物語』の後釜の番組で、いつかの選択でどのように人生が変わってしまったか、一つの物語に二通りの結末が用意されたドラマだった。
確か1クールで終わってしまったのであまり視聴率はよくなかったのかもしれないが、僕は気に入っていて、ノベライズ本まで買ったほどだった。
ところでこの『四畳半~』であるが、物語としてはまさに『もしも』を彷彿とさせる構成だった。一つの設定に則った短編集と思えばよいか。
高校までは華のない人生だったけれど大学ではきっと素晴らしい生活が、と胸躍らせる主人公の手元には、4枚のサークル勧誘チラシがある。
どのサークルに入ったかで彼の人生がどのように違ってしまうのか。
それを、大学のモラトリアムを描かせたら随一の森見登美彦が、バカらしくも愛らしく描く。
自意識、自己愛ともに過剰で、結果とてもひねくれたことになっている主人公。
彼を退廃の道へといざなった変人、野津。
そして彼らを取り巻くへんてこで魅力的なキャラクターたち。
この人の小説、好きだな。
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