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三浦しをんの小説【書評一覧】 > 格闘する者に○まる
作品名: 格闘する者に○まる 作家名: 三浦しをん ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆☆★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ 三浦しをんその他の小説 |
三浦しをんのデビュー作。
三浦しをん自身の就活体験をもとに書かれたらしい長編小説。
なおWikipediaによると、就活で出版社を受けた際、入社試験で書いた作文から文才を見出され、面接官からのススメでウェブエッセイ(のちに『しをんのしおり』として書籍化)を執筆し始めたのが文壇デビューに繋がったという。
デビュー作で就活をテーマにしたのも納得だ。
まあそれはさておき。
文学部に通う大学4年生、可南子。
漫画好きでマイペース、面倒臭がりで出不精。そのキャラクターはエッセイから浮かび上がってくる三浦しをんそのもの。ちなみに自身をモデルにしているなら、大学は早稲田なのかな。エリートコースの大学っぽいことが劇中でもほのめかされているし。
そんな可南子も周りからはだいぶ出遅れてしまったものの、いよいよ就職活動に乗り出す決心をする。漫画を愛するゆえ、志望は出版業界。漫画に熱い思いをいだきつつ、出版社の面接を受けまくることに。
住まいは実家暮らし、継母と半分だけ血の繋がった弟とともに暮らしている。唯一の実の家族である父は政治家で、滅多に家には帰ってこない。
家族は政治的な、というか本当に政治の問題でかなり微妙な関係、微妙な境遇にある。
そんな境遇の中、遅々として決まらない可南子の就職。
と表面上は暗いというか、話の設定はかなり暗いはずなんだけど、ところがどっこい、マイペースで終始ユーモラスなのがこの小説の魅力なのだ。
まず就活に関しては、可南子を始め文学部の友人ニキ君にも砂子にもさっぱり緊張感がない。
就活は僕にも少しは経験があるけど、どよーんとしてすごく嫌だなーというダークな印象しかないものだ。
しかしその辺の暗さがこの小説にはちっともなくて、キャラクターたちがのんびりと構えている様が実にほほえましい。あの就活にいだいていた暗たんたる気持がちょっとバカらしくなる。
また家族の問題も、なんだかんだでいい加減でいい人の父を始め、要領よくしれっと問題から身をかわす弟、家族に無関心なようでいて実は案外そうでもない継母と、重大なはずの問題の重大さがちっとも重くのしかかってこない。
設定はかなり暗いはずなのに、「まあいいやー」なんてみんな終始のほほんとしているのだ。
劇中ではこれといって劇的なことが起こるわけではない。いや、というかわりと劇的なことがおきているのかもしれないけど、その「劇的」感がちっとも強調されない。とにかくテーマや舞台設定とは反して、まったくのんびりしている。
キャラクターたちの超然とした、ときに人を喰ったような性格が魅力的な小説。
気楽な笑える小説を読みたいときに。
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三浦しをんの小説【書評一覧】 > ロマンス小説の七日間
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作品名: ロマンス小説の七日間 作家名: 三浦しをん ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆★★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★ ス:☆☆☆☆☆☆☆★★★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ 三浦しをんその他の小説 |
王の命令のもと、ノーザンプルの女領主アリエノールのもとに、戦場の英雄、荒くれ者の騎士ウォリックが結婚相手として迎えいれられることになる。
出会うまでは、あまりにも歩んできた人生の異なる相手に戸惑いを隠せなかった2人であったが、出会いから間もなく、2人は互いに激しく惹かれあっていく。
中世ヨーロッパを舞台にした騎士道ロマンス小説…
を翻訳しているのがこの物語の主人公、あかり。
序盤を読むだけで結末までが正確に読めてしまうマンネリ化したロマンス小説を翻訳することに疑問を覚えつつ、7日後に迫った締め切りのため、せっせと翻訳作業をしている。
しかし、ボーイフレンドの神名の突然の退職、怪しい女の影などが発覚するにつれ、あかりの怒り心頭。
翻訳される物語の中で、次第にあかりの暴走が始まる。
翻訳される中世ロマンスと、あかりや神名、そして彼らを取り巻く人たちとの現代劇が交互に描かれる。
1冊で2度おいしく、非常に上手い小説だった。
恋愛小説にはあまり興味のない僕であるが、妄想妄想の三浦しをん姉さんのこと、きっと何かをやらかしてくれるだろうとは期待していたのだが、案の定やらかしてくれていてよかった。
エッセイでハーレクイーンへの熱い思いをほとばしらせていた妄想姉さんだけあって、現代部よりも中世ロマンスのほうでノリにのっていた。
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