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中島らもの小説【書評一覧】 > 今夜、すべてのバーで
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作品名: 今夜、すべてのバーで 作家名: 中島らも ジャンル: 長編小説 笑:☆☆☆☆☆☆★★★★ 楽:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ ス:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★ 危:☆☆☆☆☆☆★★★★ 中島らものその他の小説 |
小説家、中島らもの代表作。
アル中で死にかけて入院した際の自身の経験を元にして書かれた作品。
病院という「普通の人より”死にやすい”人間ばっかり集まっ」た場所に、死にかけの状態ではいってきて、日に日に回復していく主人公の体。一方で他の患者たちに訪れる不条理なまでの死。
中島らもは『アマニタ・パンセリナ』の中で「酩酊について書くことは、死と生について語ることと同義である」といっていたけど、この作品に描かれているのはまさしくアルコールを媒介とした「死」と「生」だった。
と書くとお堅い作品に思われるかもしれないけど、さにあらず。
作品に終始横たわるのはユーモアなのだ。
事故に驚いて部屋を走り回る”歩けないはずの”老人、同じフロアに死人が出るかを賭けあう患者たち、医者に隠れてメチルアルコールを飲むアル中。
たしかにそこには人がいて、ときとして辛らつなほどの「笑い」がある。
「ギリギリまで苦痛に苛まれているとき、人を救うのはユーモアである」
そんな中島らものイズムを思わせる作品だった。
4、5年前に一度読んでいたのだが、今回再読して幾度となく感嘆の声を漏らした。
とんでもなく面白い。
とにかくキザで、だけど嫌味がなくて、テーマは重いのに読み口はライトで、そしていいバランスで可笑しい。
吉川英治文学賞は伊達じゃない。ほんと。
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中島らもの小説【書評一覧】 > 君はフィクション
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この『君はフィクション』は、らもさんが亡くなってから2年後に発売された短編小説集で、最近になって(2009年7月)文庫化された。
僕は単行本を持っていたのでその文庫化はスルーしていたのだけど、先日ブックオフで文庫版を何気なく手にとってみて、ややっと驚かされてしまった。
というのも開かれたページの内容にまったく見覚えがなかったのだ。
読んだ本の内容を忘れるということはままあることで、こと物覚えのよくない僕は、数年前に一度読んだ本を読みなおしたとき、それをまるで初見のように楽しめるという、嬉しいんだか空しいんだかよくわからない特技をもっている。
しかしそれはとりわけエッセイ集に関していえることで、物語の内容を綺麗さっぱり完全に忘れてしまうというのはいくらなんでもありえない気がする。
まったく見覚えのない小説、とうとう俺もここまで…と思わず不安な気持ちになってしまった。
しかし解説によると、どうも文庫化に伴って単行本未収録の幻の3篇が追加されたということらしい。
あ、そうかそうか、それなら納得、うんうん、としばらくニコニコしていた。
が、すぐに別の驚きに襲われた。
なぬ?!
この驚きは、1つにまだ見ぬらもさんの小説が存在したという喜びだった。まさかこの期に及んでこんな嬉しい発見があるとは思わなかった。
そしてもう1つに、すでに単行本を持っているというのに、ほとんどおんなじ本を買わないかんやん…という悲しさがあった。
うえーん。おとなのやりかたってきたないや。このはいきんしゅぎしゃのくそぶたびっちどもめ!といった思いだ(ブックオフで買ったくせに何をえらそうに)。
しかしもちろんそこで「買わない」という選択肢は存在しない。
なんとなれば、全著作はもちろんのこと、遺稿集、DVD、バンドのCDまで所有している僕なのだ。これは愛読者の域を超えて、コレクターと呼ぶべきものだと思う。
とにかく中島らもの言葉という言葉に魅了されたものとして、未読の小説の存在が許されてなるものか、というのだ。
さて内容。
「DEKO-CHIN」や「ねたのよい」などにかなりの衝撃と感銘を受けながら読んだのだけど、それらはいかんせん「笑える」小説ではないので残念ながら割愛。
笑える本の観点からみると、「結婚しようよ」がよかった。本当に、とてもよかった。
かげりの見えたヒッピームーブメント。そこに欺瞞を見出しながらも、開催されたフォークジャンボリーに足を向ける主人公とその恋人。
はっぴーえんど、三上寛、吉田拓郎などが出演するフォークジャンボリーを、主人公は興奮しながら、そしてときに冷めたまなざしで眺める。
その一夜のできごとが、可笑しく、そして切なく描かれている。
そのほか「山紫館の怪」(にやりと笑える)と「地籍神」(狂言、ギャグ)あたりが笑える。
また未収録だった3篇については、「シビレタ」の一言。
とても短い短編なので、物語としてはたいしたことはないのかもしれない。
しかし節々にちりばめられた言葉がいちいちかっこいいのだ。
「退屈にはウンザリだ。そいつは小うるさい母親のように俺をドアの隙間からのぞき込んでいる」
くぅ、しびれる!
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