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書評ブログの【笑える本を読もう!】

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作品名: 頭の中がカユいんだ
作家名: 中島らも
ジャンル: 短編小説集

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆★★★★
ス:☆☆☆☆★★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆☆★★★
中島らもその他の小説 
【書評・あらすじ】
 中島らも事実上最初に出版された小説。
 実はその前に『すべての聖夜の鎖』という掌編集を出していたのだけど、それは自費出版ゆえに幻の一冊となってしまっている。なおこの幻の掌編集『すべての聖夜の鎖』はユリイカ2008年2月号(←amazonに飛ぶ)に掲載されており、ファンとしては感動的に嬉しい。
 しかしユリイカ、すでにプレミアがついたのか、定価の倍の値段になっている。俺は持ってるぜ。ふっふっふ。

 閑話休題。
 この本には表題作「頭の中がカユいんだ」を始め、「東住吉のぶっこわし屋」「私が一番モテた日」「クェ・ジュ島の夜、聖路加病院の朝」の4つの短編小説が収録されている。
 初期の小説ということもあって、中島らもの趣味がモロに出た一冊だと思う。
 平たくいえば、シュールレアリスムの色調が色濃く出ている。
 特に表題作「頭の中がカユいんだ」がそうだ。

 配偶者とのいざこざで家出をすることになった主人公(中島らも自身がモデルか)の過ごした、わずか4日間のできごとが描かれている。
 とはいえその4日間で何かが起きるということはなく、むしろ話は例えば村八分の山口富士夫を見た日のこと、例えば公告屋についての論議、昔の女から届いた手紙、そして人を笑わせないためのコントの作り方、など縦横無尽に転がり続ける。
 また途中、コントやお蔵入りになったCMのネタなどがはさまれ、物語は暴力的に枠を崩されている。
 しかしこれだけめちゃくちゃやっといて、それでいて物語としてなぜか面白いのだからすごいのだ。
 特に注目したいのはラリりのシーンで、晩年の『バンド・オブ・ザ・ナイト』で見せる例のイメージの連鎖がすでに用いてあったりする。自動筆記は、中島らもの中ではかなり息の長い手法だったのだ。

 最後になんとなく印象でまとめてしまうと、この本はロックと笑いが通底するのだと分からせてくれる一冊だと思う。
 破壊的ユーモア、と評しておく。

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作品名: バンド・オブ・ザ・ナイト
作家名: 中島らも
ジャンル: 長編小説

笑:☆☆☆☆☆☆★★★★
楽:☆☆☆☆☆☆☆★★★
ス:☆☆☆★★★★★★★
危:☆☆☆☆☆☆★★★★
中島らものその他の小説 
【書評・あらすじ】
 僕は音楽をしているということもあって、音楽スタイル以外のロックを理解することができなかった。ロックとは自己と世界の間の軋轢をアンプとディストーションでめいいっぱい歪ませたところに初めて生ずるものだと思っていた。
 しかしこの『バンド・オブ・ザ・ナイト』を読んで、僕は初めて文学がロックでありえることを理解した。

 注意のため言っておくと、「バンド」なんてタイトルがついているが、物語にバンドの話なんて出てこない。そういう話ではないのだ。
 描かれるのは中島らも自身が経験した「ヘルハウス時代」の、恐らくは半伝記的なできごと。ヘルハウスとは一時期の中島らも宅の俗称で、失業中の中島らものもとにジャンキーたちが集って昼夜ドラッグに溺れていたことから、ジャンキーたちの間でこう呼ばれていたのだという。
 主人公大島らむの家に集ったジャンキーたちが繰り広げる、ドラッグとセックスと狂気と死の物語。アル中、分裂症、万引き常習犯、中毒者、そして不条理なまでに訪れる死。
 しかし物語は自身さえも冷めた目で見つめる語りによって描かれており、決して感傷的にならない。登場人物たちの悲哀が時に辛らつに、時にユーモラスに描かれている。

 なお、主人公がラリっているシーンでは、中島らもが傾倒していたシュールレアリズムの技法「自動筆記」が試されている。自動筆記とは、何かに憑依されたようなお筆先の状態で思考を垂れ流すように記述する手法のことだという。その手法で例えば以下のような一節が生まれる。

わしづかみにされた心臓、コンクリートの上を這いまわる太刀魚、ピス・ファクトリー
 
 そこには論理的なつながりが欠落しており、連想の連鎖によってのみ編み出される言葉の流れのようなものが生み出される。なお、この自動筆記で書かれた文章は、各章の終わり4~5ページにわたり延々と続く。
 中島らもは、普段は泥酔して気がついたら原稿が上がっていたといったような小説の書き方をしていたというが、この「お筆先」に関しては、完全に素面の状態で挑んだのだそうだ。

 この作品の感想を一言で言えば、とにかく衝撃的。
 誰にでも楽しめる作品だとは言わない。みんなに読んでほしい作品だとも言わない。
 なぜなら、ロックとはそういうものだからだ。

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